3月1日、韓国「中央日報」は、今月初めに、全国人民代表大会で採択される「第12次5カ年計画(2011~2015年)」(以下、「十二・五」)は中国史上最も注目される戦略になるだろうと報じた。
「十二・五」では中国の経済モデルの転換が行なわれる。これまで30年間、輸出と投資に頼ってきた経済は、内需の積極性を刺激する経済へと変化していく。この方向転換は中国だけでなく、アジアのほかの国や地域、そして世界の経済にも多大な影響を及ぼすことになるだろう。
「十二・五」では3方面から国内消費の増加を促進する予定だ。
まず、中国は輸出と投資に依存した経済成長モデルから脱却するだろう。工業生産はもう30年近く、中国のハイスピードな経済成長を後押しし、資本と労働力の集中が産業発展の力となっていた。しかし今、この成長モデルでは過剰な労働力の問題を解決することはできなくなってきている。そして、これ取って代わるものとして、今後はサービス業に労働力を集中し、小売業、物流ネットワーク、医療や娯楽などの産業分野に力を入れ、大規模な発展を狙う。
次に、国民の収入を上げていくことだ。この計画の主に、収入が伸びない農民に焦点が置かれる。農民の平均収入は都市部の市民のたった1/3で、計画は「調和社会」の実現にも繋がるだろう。具体的には、税収政策を利用して農民の購買力を上げ、科学技術の発展によって生産量の増加を図る。
そして、「社会の安全ネットワーク」を構築すること。人々の不安からくる「予備」の貯蓄を減らしていくことが重要だと考えられる。具体的な政策としては、社会の福祉制度の改善、退職金の充実、医療や失業保険制度の整備などがあげられる。
もちろん、「十二・五」の内容はこれだけではない。7大新興産業の発展にも力を入れる。バイオテクノロジー、新エネルギー、新素材、新世代の情報テクノロジーなど注目ポイントは多い。
これらは全て、中国の主要な貿易パートナーにとっても大きな促進力になり、東アジアに限らず、成長が鈍化しているアメリカやヨーロッパの経済にも弾みをつけることができるはずだ。「十二・五」は現代の歴史の新たな一ページになるだろう。金融危機に悩まされる世界の期待が集まる。
(文/モルガンスタンレーアジア会長スティーブン・ローチ)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年3月4日