かつて、朝鮮で将軍家の料理番を務めた日本料理人・藤本健二氏は、平壌の最高権力者の家庭で長年にわたり見聞きしてきたこと、そして、金正恩(キム・ジョンウン)と接してきた経験から、正恩が幼い頃から優れた観察力や分析力、統率力、行動力を示し、父・金正日(キム・ジョンイル)の地位と権力を引き継ぐのに相応しい人物だと気付いた、と語った。
9歳で大きな期待を寄せられる
かつて、13年の長きにわたり金正日の官邸で料理番を務めた日本人料理人の藤本健二氏は10月10日、東京で、香港の週刊誌「亜州週刊」のインタビューに答え、次のように語った。長年にわたり朝鮮の最高権力者の家庭で見聞きしたこと、そして、金正恩と直接接した経験から、正恩は年が若いが、兄の正哲(ジョンチョル)に比べ、金正日の地位と権力を引き継ぐにはより相応しい人物だと思った。
正恩は顔立ちや体格が祖父によく似ており、また、幼い頃から優れた分析力や観察力、統率力、行動力を示していたという。藤本氏によれば、金正日の後継者については、外部から見れば謎が多く、様々な噂が入り乱れたが、実は、正恩が9歳の頃には、既に、金正日は彼に大きな期待を抱き、意識的に後継者に育てたという。
1992年1月8日、金正日は、元山(ウォンサン)招待所で正恩のために特別な9歳の誕生パーティを開いた。“特別”というのは、列席者の席上に1枚ずつ楽譜が配られ、その曲名が「パルコルム(足取り)」だったことである。列席者達はバンド演奏に合わせて歌を練習し、更に、最後には揃って合唱をした。この歌は金正日が正恩に贈った特別なプレゼントだった。それを9歳の誕生日に公開で贈ったのは、金正日にとって、「9」が最も縁起の良い数字だからだ。この、正恩を讃える「パルコルム」という歌は、現在、朝鮮の党・政府・軍で広く歌われているが、実は、金正日が当時既に三男・正恩に対して大きな期待を寄せていたことの証である。