注目点3-労働力不足による経済成長モデルの転換
今年の春節後、長江デルタや珠江デルタなどの沿岸地区のみでなく、重慶、武漢、成都など中西部の都市でも労働力が不足するという現象が生じた。これにより、企業は争って出稼ぎの農民工の採用を開始した。
中華全国総工会(ACFTU)が発表した最新調査によると、現在、青年農民工の大多数が① 低収入、② 労働安全に関わる多くの隠れた危険、③ 労働契約の実施が不完全、④ 職業の安定性が低い、⑤ 社会保障レベルが低い、⑥ 企業の人文配慮が乏しい、⑦ 職業訓練が非理想的、⑧ 労働組合への加入率が低いなど、8つの問題点に直面しており、これが青年農民工の出稼ぎを妨げている。このため、農民工の各種権益を保障することは、それぞれの業界の労働組合委員らが以前から関心を寄せ続けている問題となっている。
また、この他の調査によると、珠江デルタにある90%以上の企業で労働力が不足していることが明らかになった。こうした需給関係の変化により、企業は労働者の待遇を改善せざるを得なくなり、労働コストが上昇した。人力資源・社会保障部の統計によると、2010年に、中国の大多数の都市において最低賃金基準が引き上げられ、平均22.8%増加した。
全国人民代表大会の辜勝阻代表は、「これは、中国の廉価な労働力時代が徐々に終焉を迎え、長期に渡って継続してきた廉価な労働力に頼った経済発展モデルがすでに維持できない状態になっていることを意味しており、労働コストの上昇が中国に経済の発展方式のモデルチェンジを迫る主な動力となっている」述べた。
注目点4―公共財と公的サービスの整備による国民幸福感の向上
今年春以降、中国各地で人民代表大会や政治協商会議が開催され、地元の発展に向けた計画が相次いで発表されることとなる。こうした中、「幸福感」や「幸福指数」といったワードが注目され、地方の発展における新たな目標となっている。
これについて、全国人民代表大会の辜勝阻代表は「中国では国民の需要が日々高まっているのに対し、公共財や公的サービスが立ち遅れているという問題が深刻になっている」と指摘した。また、「これまで、経済の成長至上主義的なやり方によって、資源配置の不均衡が生じ、公共資源の供給不足をもたらした」との見方を示した。
辜代表によると、中国では教育、医療、社会保障に充当する支出はこれら3項目を合計しても政府支出のわずか29.2%のみに留まっており、同等の発展レベルの諸外国に比べて約20ポイント下回る。医療衛生サービスを例とすると、「看病難、看病貴(診察を受けるのが難しく、治療費も高い)」という問題がとくに深刻であり、これらの問題は、医療資源の配置が不均衡であることや医療サービスの公益性の不足などが原因と見られる。
統計では、中国の医療資源の70%が都市部に集中し、さらに都市部では、医療資源の80%が大・中規模の病院に集まっている。