2010年度「中国の国防」白書(全文)

2010年度「中国の国防」白書(全文)。 中国の国防白書

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発信時間: 2011-09-23 13:44:07 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

前書き

21世紀の初めの10年間に、国際社会は開放と協力の中で発展をとげ、危機と変革の中で前進してきた。ともに発展のチャンスを享受しあい、さまざまな挑戦にともに対応することは、すでに各国の広はんな共通認識となっている。力を合わせて困難を克服し、互恵・ウィンウィンの関係を築き上げることは、人類がともに繁栄し、発展を実現するために、必ず通らなければならない道である。

中国は、すでに新しい歴史の起点に立っており、中国と世界の前途と運命は、今まで以上に密接不可分な関係にある。共同のチャンスと挑戦に向き合う上で、中国は、相互信頼、互恵、平等、協力の新しい安全観を堅持し、中国国民の根本的な利益と世界の人びとの共同の利益、そして中国の発展と世界の発展を結びつけている。また、中国の安全と世界の平和を結びつけ、中国みずからの平和的発展によって、持続的な平和と共同繁栄、調和のとれた世界の建設を推し進めていくことに努めている。

21世紀の次の10年間には、中国が国を発展させるための重要な戦略的チャンスを引き続きとらえ、科学的発展観を深く貫き通し、平和的な発展の道への歩みを堅持し、独立自主の平和的外交政策と防御的国防政策を実施し、経済建設と国防建設を統一して企画し、小康社会(ややゆとりのある社会)を全面的に建設する過程で、富国と強兵を同時に実現させることにしている。

一、安全情勢

現在、国際情勢には、新たな深刻かつ複雑な変化が現れている。経済のグローバル化、世界の多極化、社会の情報化の流れは不可逆であり、平和・発展・協力という時代の流れを阻むことはできない。しかし、国際戦略における競争や矛盾も発展してきており、グローバルな挑戦がさらに突出し、安全への脅威の総合性、複雑性、多変性は日増しに顕在化している。

世界は、総合的な平和、安定という基本的な態勢を保っている。国際社会が手を携えて、国際金融危機に対応することで、初歩的な成果が現れた。各国は、発展戦略とモデルの調整を急いでおり、全力をあげて新たな経済成長スポットを創出し、科学技術のイノベーションは、新たなブレークスルーをもたらし、経済のグローバル化に新しい発展がみられるようになった。世界の力関係には新たな態勢が現れ、新興大国と発展途上国の経済の実力、国際的地位と影響力は、いちじるしく増強してきており、世界の多極化の見通しは、さらに明確になってきた。国際的なシステムの改革は、大勢の赴くところとなり、世界的な経済・金融対策メカニズムの構築がちくじ推し進められ、20ヵ国・地域(G20)の役割を増強している。また、国連などの国際政治や安全システムの改革が注目されている。国際関係には大きな調整がみられ、国と国の間における経済の相互依存は深まり、直面する共通の挑戦が多くなり、交流、協調、協力は大国関係の主流となっている。平和を擁護し、戦争を制約する要素がたえず増加し、人類の前途と運命は全体的に見て光明に満ちている。

国際安全の情勢はより複雑になってきている。国際的秩序、総合的国力、地政学的政治などをめぐる国際戦略の競争は、日増しに激しくなってきており、先進国と発展途上国、従来の大国と新興大国の間の矛盾が時には顕在化し、局地的な衝突や地域的なホットスポットが次々と現れている。一部の国は、政治、経済、民族、宗教などの矛盾による動揺にしばしば巻き込まれており、世界はまだ平和であるとはいえない。また、世界的な金融危機を引き起こした根深い矛盾と構造の問題は、いまだ解決されておらず、世界経済の回復の不安定さ、アンバランスさが突出している。テロリズム、経済安全、気候変動、核拡散、情報安全、自然災害、公共衛生安全、多国籍犯罪などグローバルな挑戦は、各国の安全に対する脅威として日増しに拡大してきている。伝統的安全の脅威と非伝統的安全の脅威が混在し、国内の安全問題と国際安全問題が相互に作用し合っており、伝統的な安全観とそのメカニズムでは、当面の世界におけるさまざまな安全面での脅威と挑戦に、効果的に対応することは難しくなっている。

世界の軍事面での競争も依然として激しくなっている。主要国は安全と軍事の戦略調整を急いでおり、軍事改革の足取りを速め、軍事面でのハイテク・新技術の開発に力を入れている。一部の大国は、宇宙空間、インターネットや極地における戦略を作成しており、「通常即応グローバルストライク」(PGS)という手段を発展させ、ミサイル迎撃システムの整備を加速させ、コンピューターネットワーク作戦の能力を増強させ、新たな戦略的要害の高地を占有することに努めている。一部の発展途上国は、軍隊強化の勢いを保ち、軍隊の近代化を推し進めている。国際的な軍備抑制のプロセスはいくらか推進されたが、大量破壊兵器の拡散防止情勢は錯綜し、複雑な様相を呈しており、国際的な拡散防止のメカニズムの維持と強化は任重くして、道遠しである。 アジア・太平洋地域の安全情勢は全般的に安定している。アジアは率先して経済回復を実現し、全般的に発展の態勢をさらに強固にしている。アジア各国は、経済のグローバル化と地域経済一体化のチャンスをとらえ、経済の発展と地域の安定を促進させることに尽力し、利益共同体と運命共同体であるという意識を強めている。マルチラテラリズム(多国間主義)と開放的なリージョナリズム(地域主義)を堅持し、域内、域外の国との二国間または多国間協力を積極的に発展させ、地域的な特色の備わった経済と安全協力システムの構築に努めている。上海協力機構(SCO)は、地域の安定と発展を促進する上での影響力を増強し、東南アジア諸国連合(アセアン)共同体の構築もちくじ推し進められている。中国とアセアンとの協力、アセアンと中日韓との協力、中日韓などの協力は、たえず深化し、アジア・太平洋経済協力会議(APEC)は、ひきつづき発展をとげている。

アジア・太平洋地域の安全情勢の複雑性、多変性が顕在化してきている。地域のホットスポットは長年解決されておらず、朝鮮半島の情勢はしばしば緊迫し、アフガニスタンの安全情勢は依然として厳しく、一部の国の政局が動揺している。民族と宗教の矛盾が突出し、領土と海洋権益をめぐる紛争が時にはエスカレートし、テロリズム、分裂主義、極端主義の活動がはびこっている。アジア・太平洋地域の戦略的枠組は、大幅な調整が考えられており、関連する大国は、戦略的資金投入を増加させている。アメリカは、アジア・太平洋地域における軍事同盟システムを強化し、地域の安全問題への介入を強めている。

中国は依然として、発展の重要な戦略的チャンスの中にあり、安全環境は総じて有利である。世界的金融危機の衝撃に効果的に対応し、経済の、安定した比較的迅速な発展を保ち、国の安全と社会の安定を積極的に維持し、総合的な国力は新たな段階へと引き上げられている。従来の大国と新興大国との協調、協力を強化し、周辺諸国との善隣友好と実務的協力を深め、広はんな発展途上国との互恵協力を拡大させ、ともにグローバルな挑戦に対応する中で、独自の役割を発揮していく。中国政府は、新しい情勢のもとで、両岸関係の平和的な発展の方針・政策を制定、実施しており、台湾海峡情勢の平和安定の維持を促進し、両岸関係は重要かつ積極的な進展をとげた。両岸双方は「台湾独立」に反対し、「九二共通認識」という基盤を踏まえて、双方の政治的な相互信頼の増強を堅持し、話し合いを行い、両岸の直接的な双方向の「三通(通商、通航、通信)」を全面的に実現させ、経済や金融面での協力を推進するなど、一連の取り決めで合意した。両岸関係の平和的な発展は、両岸の同胞の利益と念願にかなったもので、国際社会においてもあまねく歓迎されている。

中国が直面する安全面での挑戦は、これまでにも増して多次元、かつ複雑になってきている。中国は広い国土と海域を持ち、また今は、小康社会を全面的に建設するカギとなる時期にあるため、国の安全を守る任務は重い。「台湾独立」分裂勢力およびその分裂活動は、依然として両岸関係の平和的発展の最大の障壁と脅威になっている。両岸関係の発展はさまざまな複雑な要素による制約を受けている。「東トルキスタン」「チベット独立」分裂勢力は、国の安全と社会の安定に大きな危害をもたらしている。国の領土主権、海洋権益を守るための圧力が増大し、テロリズムの脅威が現実的に存在し、エネルギー資源、金融、情報、自然災害など非伝統的な安全問題が増えている。また、外部からの不信感、妨害やけん制が増えている。アメリカは、中米の三つの共同コミュニケの原則に違反し、台湾に武器を売却し続けており、中米関係と両岸関係の平和的発展がひどく損なわれている。 

めまぐるしく変わる複雑な安全情勢に直面してはいるが、中国は、平和、発展、協力の旗じるしを高く掲げ、総合的な安全、協調的安全、共同安全の理念を堅持し、相互信頼・互恵・平等・協力の新しい安全観を堅持し、全面的に国の政治、経済、軍事、社会、情報など各方面の安全を守り、世界の各国とともに、平和と安定、平等と相互信頼、協力・ウィンウィンの国際的な安全環境をつくることに努めている。

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