文=コラムニスト・陳言
日本は非常に特殊な安全保障・防衛政策を敷く国である。第二次世界大戦に敗れた日本は軍隊を持つことが出来なくなった。自衛のための必要最小限の軍事力を保持するために、日本では自衛隊が設置されている。だが、日本には在日米軍というまぎれもない「軍隊」がいる。
◇在日米軍兵士が起こす事件に日本の警察は手も足も出ず
1951年、日米間で軍事同盟「日米安全保障条約」が調印された。この条約において、米国の陸・海・空軍が日本国内で駐留すること、在日米軍が極東の平和と日本の安全を保障するために、日本政府の要請に応じて、国内の騒擾 や内乱の鎮圧の援助を行なうこと、外国からの武力攻撃に対し共同防衛することが規定されている。
今でも在日米軍兵士には治外法権が認められており、車を運転中に日本人をはねようとも轢き殺そうとも日本の法的な制裁は一切受けない。日本の警察も手が出せず、事故の加害者を捕まえても米軍の法執行機関に移送しなければならない。これとまったく逆なのが日本の自衛隊である。自衛隊用の特殊車ナンバープレートを取り付けた乗用車はなく、自衛隊員が事故を起こせば一般国民と同様の法的な制裁を受けることになる。
3年前、在日米軍兵士の運転する乗用車が起こした死亡事故の米国側の処分結果について、先月、松本剛明外相は、「報告ができる段階には至っていない」と述べ、事実上公表しない考えを示した。これは2008年8月、米兵が運転する車がオートバイに正面衝突し、オートバイの運転手を死亡させた事件で、国会で何度も論議されている事件である。だが、米国当局は加害者兵士を帰国させただけで、その後どうなったのか、どう処理するのかに関しては日本政府もまったく関与できない状態になっている。
防衛施設庁の最新データによると、1952~2007年における在日米軍兵士が起こした事件・事故は計20万件におよんでいる。被害者となった日本人のうち、1,076名が死亡しているが、軍事裁判にかけられた者はわずか1人だけであり、懲戒処分を受けたものも 318人にとどまっている。
◇一部の人を犠牲にすることで日本全体の安全を確保する