かつてのソ連は西側にとって最大のライバルで、冷戦時代にはモスクワのいかなる「拡張的行動」も西側の強力な反対に遭ってきた。今では西側はロシアの脅威がどれほどのものか、いささか判断に迷っており、時にはロシアを重視し、時には重視しない。西側はここ数年、東に拡大してロシアの台頭を抑えており、ロシアの政権中枢を追い込んでいた。クリミアの危機が米国の政権中枢にもたらした挫折感・敗北感は米国の面目を失わせ、米国や西側が実際に感じた脅威を上回るとみられる。
西側は大声で騒ぎ立て、ロシアを西側が主導する欧州の秩序にとっての厄介事だとしている。だが西側諸国はプーチンが主導するロシアが覇権を求めて捲土重来を果たせると思っていない。
米国と西側諸国が最も重視するのはやはり中国だ。中国の国力の伸びには米国を凌ぐ潜在力がある。西側の人々は、未来の中国は現在の国際政治・経済の秩序をひっくり返すだけの力を備えるが、ロシアにはそんなことはできないとの見方を示す。ロシアにとってみれば、中国は西側の圧力を分散する戦略的な牽制力であり、西側のロシアに対する挑戦的な見方を和らげており、プーチン大統領に外交手段を駆使して西側に対し柔軟な手腕を用いる可能性を与えているといえる。