(5)社会主義の中国は誰にも動かせない
中国とタイの両国の間には、何も問題はない。もしあるとすれば、協力と往来を、特に経済建設の分野で深めなければならないことだろう。政治的には、われわれはともに世界平和のため、まずアジアの平和のために共に努力している。中国による社会主義の推進は、誰にも動かせない。われわれが進めるのは、中国の特色ある社会主義であり、社会の生産力を絶えず発展させる社会主義であり、平和を主張する社会主義だ。社会の生産力を発展させることではじめて、国はようやく一歩一歩と富強に向かいはじめ、人民の生活も一歩一歩改善できる。平和な環境を勝ち得てはじめて、比較的スムーズに発展することができる。中国は自国の利益、主権、領土保全を守らなければならず、中国は同様に、社会主義国家は他国の利益、主権、領土保全を侵犯してはならないと考える。
過去には2つの超大国が世界を左右して来たが、現在は状況が変わった。しかし、強権政治はエスカレートしつつあり、少数の西側の先進国が世界を独占しようとしていることが、私にははっきりと見て取れる。パリの7カ国首脳会議(1989年、パリサミット)こそ、これを体現している。この会こそが中国への制裁を決定したのであり、彼ら(サミット参加諸国)は経済的な手段を使うとともに、ハイレベルの接触を避けるなどの政治的な手段も使っている。こうしたことは中国にどんな影響があるか? 米国であれ、フランスであれ、政策決定者が中国へのはっきりとした認識を欠く点が少なくとも2つある。第一に、中華人民共和国は22年間の戦いの末に建国され、建国後は3年間にわたり朝鮮を助けて米国と戦った。広範な民衆の下支えが無ければ、こうした勝利を得ることは不可能だ。このような国を思うままに打倒することができるのか? 不可能だ。そういった能力を持つものは、国内だけではなく、世界にも見当たらない。超大国、裕福な国、いずれにもこうした能力はない。第二に、世界上で最も孤立を恐れず、封鎖を恐れず、制裁を恐れないのが中国だ。建国以後、われわれは孤立させられ、封鎖され、数十年にわたる制裁を受けてきた。しかし最終的に、われわれには大した損害はない。何故か? なぜなら中国は面積がこれほど大きく、人口がこれほど多く、中国共産党にも中国の人民にも気骨があるからだ。
さらに一点付け加えると、外国の侵略や脅迫は、中国人の団結、国への愛情、社会主義への愛情、共産党への愛情といった情熱を刺激するとともに、われわれのさらなる冷静さを促す。だから、外国による侵略や脅迫は賢明な手段ではなく、われわれの方こそがそこからメリットを得ることができる。事実が示すように、われわれを制裁しようとする人々も、こうした経験を総括し始めている。つまるところ、中国の人民は孤立を恐れず、よこしまなものを信じない。国際社会の情勢がいかに変化しようと、中国は踏みとどまることができるのだ。(1989年10月26日、鄧小平氏とタイのチャチャイ首相との会談より抜粋)