「不動産や金融の方が稼ぎやすそう」
香港理工大学の赤を基調とする校舎の中で、低いガラス張りの建築物がひときわ目立つ。これは同校の各種科学研究成果を示すイノベーション館だ。記者はそこで、エネルギーや宇宙など各分野の科学技術製品を目にした。館内には大量のLED照明が設置されたミラーウォールがあった。これは同校の科学研究者が研究開発した技術で、新型・高性能照明システムだという。
同校のこの状況は個別のケースではない。香港のその他の大学も科学研究とその成果の転化の促進に力を入れている。香港科技大学の教員である王氏によると、同校は今年8月「香港科技大学創業ファンド」を設立した。5年内に5000万香港ドルを出資し、同校の学生・教員・OBが設立するベンチャー企業に投資を行う。
香港大学で生物医学を先行する香港人のジョシュア氏は記者に対して、「香港の大学内にはイノベーションの気風がある。私は1年生の頃からキャンパス内で開催されるワークショップやイノベーション講座に参加した。周囲の学生もさまざまなアイデアを持っている。しかし香港社会はイノベーションに対する認識が不足しており、多くの人が不動産や金融の方が稼ぎやすそうと感じがちだ」と指摘した。
市民の洪為民氏は記者に、「香港人に新しい物事を受け入れる能力がないわけではなく、まだその時期ではないだけだ」と話した。彼はモバイル決済を例に挙げ、同サービスは2017年になりようやく香港に進出したが、2年もたたないうちに普及率が半数に達したと述べた。