西湖酢魚(シーフーツーユイ)は、甘酸っぱい魚のあんかけ料理で、杭州料理の名物である。西湖のほとりにあるレストラン「楼外楼」の西湖酢魚はもっとも評判がよさそうである。
「樓外樓」は、孫文や魯迅も訪れたという、杭州屈指の老舗である。「西湖酢魚」を作るには、西湖で獲れる草魚をよく使うと言われている。頭と尾がついた40センチほどの魚丸焼きであるが、頭から半分に割られ、黒みがかったあんをたっぷりとまとっているのが普通である。
「西湖酢魚」に使うお酢は黒酢で、甘さと酸味が控えめなので、やさしい味わいになっている。そして、「西湖酢魚」の場合は、魚を揚げない。開いた魚をゆでてから、上からあんをかけるだけだそうである。そのため、素材そのものの味が生きているような気がして、柔らかい白身は、とろけるようになる。ただし、骨が多いのでちょっと苦労するのかもしれない。
「西湖酢魚」の由来:
むかし、西湖のほとりに宋という漁師の兄弟が住んでいた。地元の悪人が、兄嫁の美しさに惹かれて兄を殺してしまった。弟は、役人に訴えようとしたが、悪人の報復を恐れた兄嫁は逃げることを勧めた。弟が家を出る日、兄嫁は砂糖やお酢がタップリ入った魚料理を食べさせた。その変わった味に驚いた弟に、「甘くて酸っぱい魚料理を食べさせたのは兄の死を忘れないでほしいから」と兄嫁は言った。そして、そんな気持ちを胸中に弟は家を去った。
しばらくして、弟は戻ってきたが、兄嫁の消息をつかめずにいた。そんなある日、弟は、宴会の席で、兄嫁が食べさせてくれた料理とまったく同じ味の料理を口にして驚いた。調べたところ、それは紛れもなく兄嫁が作った料理だった。実は、彼女は悪人の報復を恐れて、名前を変えて官舎の賄いをしていた。ようやく兄嫁を見つけた弟は、兄嫁とふたたび漁の暮らしを始めたということである。それ以来人々は、宋家の兄弟をたたえてその料理をひろめ、杭州料理の定番となったわけである。(編集:ミン亦氷)
「中国国際放送局 日本語部」より 2008年8月29日