手探りで戦略思想を調整
21世紀に入り、中国経済が急成長し、地域協力への促進力が拡大するに伴い、日本は東アジア経済枠組みを制御できなくなったようだ。日本の政治家と学者は徐々に方向を見失い、新たな汎東アジア枠組みの構築を模索するようになった。「東アジア」の範囲を拡大し、インド、豪州、NZなど東アジア以外の国を取り込み、中国が徐々に強めているリーダーシップに対抗しようとしている。
麻生太郎外相(当時)は2006年に出版した『自由と繁栄の弧』という政治論の中で、日本は北東アジアから東南アジア、さらにはインドから欧州に至る、同じ価値観を持つ共同体を構築すべきと主張している。安倍首相は2007年に初就任しインドを訪問した際に、いわゆる「大アジア」パートナーシップ計画を打ち出した。太平洋地域、さらには米国と豪州を含む巨大ネットワークを構築すると称した。日本の学界も、日本の戦略的選択に関する研究を展開した。これらの思想と行動計画を見ると、日本の戦略界が現状を鑑み、この百年に渡る東アジア大陸を立脚点とする戦略思想を反省していることが分かる。
そこで日本はこの伝統的な戦略を変え始め、海洋を見据え真の「海権」を模索している。最強の海洋覇権を誇る米国に依存し、豪州などの海に面した西太平洋諸国、「東を見る」から「東に移動する」に移ろうとしているインドと協力し、「大陸の東アジア」から遊離した「海の東アジア」を構築しようとしている。これは米国の戦略界が提唱する「オフショア・バランシング」構想と合致している。日本は近年「積極的平和主義」外交を推進しているが、これは海上ルートを紐帯としこのような海洋諸国協力体を構築することで、中国や「大陸の東アジア」全体と雌雄を決するためだ。
安倍首相は再任後、この思想を日本の外交戦略に調整した。2013年には日米豪印による「安全保障ダイヤモンド構想」を提案し、その後はさらに南太平洋諸国と生態問題について「インド太平洋地区」という地理的概念を掲げ、軍事安全及び地政学的駆け引きの中身を持たせ、いわゆる「インド太平洋戦略」という構想を形成した。トランプ大統領が「インド太平洋」という概念を使い米国のアジア太平洋政策を論述すると、日本はさらに米国との連携を強化した。米日印豪安全対話会議などの形式により、「インド太平洋戦略」の実施を促そうとした。
米国がTPPから離脱したが、安倍政権はこの中国を排除する枠組みを維持しようとしており、昨年末には米国不在の11カ国による合意にこぎ着け、米国復帰を「静観」している。さらに日本は中国の「一帯一路」(シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロード)イニシアチブへの参加の意向を口で示してはいるが、実際にはインドや豪州などと積極的に連携し、一帯一路の代替案を作成し、それに署名している。
また日本は中国の「海上シルクロード」付近に防衛線を引き、ベトナムの海洋安全能力の建設及び経済発展戦略への取り組みを拡大している。インドネシアでは中国と高速鉄道プロジェクトをめぐり激しく競争し、ミャンマーでは中国の鉄道建設プロジェクトを妨害する消極的な効果を発揮した。さらに日本はインド洋沿岸のパキスタン、スリランカ、モルジブなどの国との交流を強化し、インドと共に南アジアの一部の国でのインフラ投資を強化しようとしている。他にも日本は「太平洋・島サミット」の準備を進めており、太平洋諸国との経済協力推進に、戦略的連携の中身を持たせようとしている。