期待される農村改革
中国共産党の17期三中全会が10月9日に開幕しました。「神舟7号」の快挙やサブプライム・ローン問題にかかわる議論もあったようですが、ここでの最大の議題は農村改革の推進でした。中国経済の高成長を決定づけた「改革・開放」路線が敷かれたのがちょうど30年前の11期三中全会でした。この間、都市と農村との格差(注5)が進むなど課題も少なくなく、農村改革は、常に古くて新しい問題でした。
農村改革は中国経済の持続的高成長にとって、また、中国の内需拡大を通じて世界経済に貢献する必要から、今日大きくクローズアップされています。第二回天津夏季ダボス会議での温家宝総理のメッセージが17期三中全会にも反映されていると言えます。
今日の状況をかりに「現代イソップ物語」とするならば、サブプライム・ローン問題で深手を負ったウサギが、傷を癒すべく、後から来るカメに協力を求めるところまで話が進んでいると言えるでしょうか。チャイナ・パワーの源泉である中国経済の成長スピードは、カメのようなのろい足取りではないにしろ、少し減速(注6)されることになっていますので、ウサギのところまで来るのにやや時間がかかります。しかしそれまでに、持続的成長に向け、長年の課題である農村改革を力強く、安定した歩みで推進し、その成果が出た後にウサギの協力要請を考え、かつ宇宙事業でもよきライバルになろうと、カメは考えているようです。
注1 サマーズ元米国財務長官は、金融安定化法案が米下院で可決された直後、サブプライム・ローン問題の克服には、米国の納税者以外では、中国と中東国家の支持に大きく頼っている、と語ったことが、英国『インディペンデント』紙で報じられている(中国新聞ネット 2008年10月8日)。 注2 夏季ダボス会議は、ダボス会議の創始者であるクラウス・スクワブ氏と中国の温家宝首相の共同提案によって開催。2007年に第1回を大連で開催(2009年の第3回も大連となる予定)。 注3 米国が市場救済の資金集めを始めれば、中国は2000億ドルの米国国債を購入するなど米国救済措置を講じるなどとしたうわさ。 注4 世銀のチーフエコノミストで中国を代表する経済学者(北京大学教授)である林毅夫氏も「米国は全世界との協力で眼前の危機の解決を図りたい意向だ。中国との協力だけを当てにしているわけではない。ただ、中国が安定した高成長を遂げることが大きな貢献に値する」としている。 注5 都市と農村の所得格差は平均3.33:1とされる。 注6 中国側の発表によるGDP成長率で見ると、2007年11.9%、2008年10.1%(予測値)、2009年9.0%(予測値)。成長率の減速は経済過熱を軽減するための調整措置による。 |
「人民中国」より2008年12月30日