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急ピッチで進む北京の地下鉄網整備
発信時間: 2009-02-27 | チャイナネット

北京の地下の悲喜こもごも

 

エピソードⅠ

「降ろしてください!」

蒋さんの地下鉄内での暇つぶしは、PSPのゲーム(写真・高原)


日系企業で働いている蒋妲さんの住まいは、もともと市内の長椿街である。自宅から会社まで約40分、毎日地下鉄で通っている。まず2号線に乗り、途中1号線に乗り換える。1号線は北京を貫く主幹線なので、とにかくラッシュアワーは殺人的な混みようである。「北京の地下鉄は他はともかく、通勤時の混雑だけは日本に負けてはいない」と蒋さんは言う。

ある日、蒋さんは朝8時すぎに、地下鉄の建国門駅で乗り換えようとしたが、いつもこの駅は乗り降りが大変なので早めにドア近くに進んでいた。ドアが開いて人の流れと一緒に一旦外へは出たものの、あっという間に乗車する人波に押し戻されてまた車内に戻ってしまった。やむなく、次の駅で下車して、向かいの車両に乗って一駅戻った。

この話はけっこう長い間同僚たちに笑われた。彼女の同僚の大半が地下鉄で通勤している。シャキッとしたホワイトカラーたちも、地下鉄に乗れば、車内でもまれて汗だくになり、おばさんたちの取りとめのないおしゃべりを黙って聞いているしかない。

「だいぶ楽になった」

1号線に乗るつらさを避けて、蒋さんは会社に近い南三環路沿いの方荘に引っ越した。今は、新しく開通した5号線で通っている。蒋さんが言うには「地下鉄5号線と10号線が開通してから、乗客の流れが変わってけっこう楽になりました。以前は車内で本や新聞を読むスペースは全くなかったし、読みたいとも思いませんでしたが、現在は、とりあえずは携帯ゲーム機(PSP)で映画や小説を見ることができるし、以前よりはるかに気分もよくなりました」

そして、5号線の新しい車両は、人に優しく、騒音が少なく、クーラーもあり、ドアの両側の隅に背もたれがついている。蒋さんは背もたれに寄りかかってドアのそばに立つのが好きだ。二度としくじらないために。

エピソードⅡ

地下鉄閉鎖で友人が増えた

地下鉄は朱雲楽さんと李易寧さんお二人の愛の証人になった(写真・高原)
朱雲楽さんと李易寧さん若夫婦にとって、地下鉄は必要不可欠の交通手段である。特に結婚前の朱さんは家から会社まで4本の地下鉄を乗り継ぐ毎日であった。たしかに地下鉄にもまれる毎日は大変ではあったが、彼らに言わせれば地下鉄が彼らの生活にもたらしたものも少なくない。

朱さんにとって忘れがたい一日は、ある日の13号線の出来事である。朝のラッシュ時に突然運休になった。その日彼は多くの人々と同様、駅に向かっていたが、駅に入る前に見る見る駅の鉄柵が閉じてしまった。これは参った。間違いなく遅刻になってしまう。若い人が鉄柵に腕を差し込みながら、係り員に手を振って「ちょっと、何とかしてくれ!遅刻したら給料から差っ引かれる!」と、叫んでいた。みんな、ただ鉄柵の外で待つしかなかった。ところがいくら待っても、再開しそうにない。結局、バスに乗るしか方法はなかった。

バスに乗ってあれこれ話してみると、なんのことはないほとんどが同じ会社の人間である。部門が違っていて行き来がなかっただけである。「なんだ、このバスはうちの会社の通勤バスというわけだ!」と笑った。交通渋滞のせいもあり、バスが会社に着いたのは、11時近くである。というわけで、みんなで一緒に昼ご飯を食べることになった。地下鉄の運休のおかげで、朱さんは多くの同僚を知り、付き合うきっかけになった。

おかげさまで豆乳が飲めた

李さんも、おもしろい経験をしている。ある朝、朝食を食べ損ねて代わりに一杯の豆乳を買ってあわただしく13号線に飛び乗った。さて、豆乳カップにストローを差し込もうと膜を突いたが、なかなか差し込めない。悪戦苦闘していると、隣に立っていた能面のような無表情のおじさんがズボンから折り畳みナイフを取りだして、無言でその膜に穴を開けてくれた。

あまりのことに、どうしたらいいかわからない。数秒間してやっと彼女はおじさんに「ありがとうございます」と言った。ところが、このおじさんはちょっと頭を振っただけで、やはり能面のような顔をして何も言わなかった。

このことを思い出すたびに、李さんはいつも笑ってしまう。確かに大都市の人間関係は薄らいだが、地下鉄の車内といった狭いスペースの中で、見知らぬ人間同士が思わぬコミュニケーションを持つ。なんだかとっても面白い。

そして、地下鉄はまたラブストーリーの場ともなる。結婚前、朱さんは近郊の通州に、李さんは市内の南礼士路に住んでいた。朱さんは退勤時間が遅いため、自分で晩ご飯をつくって食べる余裕がなかった。李さんが毎日弁当をつくって、地下鉄南礼士路駅のホームまで持って行き、退勤する朱さんに渡した。ま、ご飯と一緒に幸せを持って帰ってもらったというめでたいお話である。

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