中国の不動産問題が深刻さを増すにつれ、日本の関心も高まってきた。東京大学経済学部の伊藤隆俊教授は中国の不動産市場過熱化問題解決の出口は農村にあるとの考えを示した。内容は以下の通り。
北京価格の東京接近驚くに足らず
――中国は80年代の日本の不動産バブルの轍を踏む可能性があると考えるのは、どうしてでしょう。
伊藤 現在、中国の銀行が提供する住宅ローンの額はかなり増えています。一般の状況では、融資が増えれば、利子も増えますが、中国は依然として低利子政策を取っています。銀行の企業への融資を奨励することで、当面の経済危機を過ごすという中国の一つの政策であるのは、もちろんです。
当時、日本は円高を抑えるため、低利子政策を講じました。現在、中国も低利子政策を維持しています。今、西側諸国は人民元の切り上げを訴えていますが、中国は経済発展の維持という問題を考慮することから、現行の低利子政策について大幅な修正はしていません。通貨の価値上昇は大量のホットマネーの流入を招き、その国の経済に悪影響を及ぼします。また、低利子政策によって多くのお金が不動産に流れることになります。
――年初、中国国内のメディアは東京の不動産価格を深く考察するため記者を派遣しました。彼らが注視したのは、北京の第2環状線内の価格が日本の同等地域の価格に非常に近づいてはいても、2つの都市の郊外では住宅レベルと価格の差が比較的大きい、ということです。今の東京の住宅の価格は合理的な位置にあるのかどうか、また北京の合理的な価格はどの程度であるべきだ、と考えますか。
伊藤 この問題はどの角度から見るべきでしょう。中国の人口は日本の10倍ですから、中国で10分の1の人が日本の経済レベルにあるのであれば、北京の価格が東京の価格に近くても驚くに足りません。中国のこうした「富裕層」も北京、上海といった大都市に比較的集中して居住しているからです。
しかし、住宅の価格上昇スピードから言えば、不合理な点があるとも感じています。速すぎるからです。これは日本では見られなかったほど非常に速い上昇スピードです。東京と北京2都市の郊外の住宅レベルと価格の差が比較的大きいというのは、それは日中両国の中等以下の民衆の生活レベルの差だと言えます。現在、中国も日本とのこうした差の縮小に努力しているようです。
最近の10年ないし20年の調整を経て、東京の価格はすでに比較的合理的なレベルに達したと言っていいでしょう。北京の価格が合理的かどうかは、恐らく一言ではっきり言うことはできません。