ウォール街で名を馳せてからというもの、ジム・ロジャーズ氏のもとには投資の成功者になる秘訣を聞きにくるメディアや投資家が絶えない。そのたびにロジャーズは、必ず投資の前に数字の意味を理解せよと説く。
彼が投資を計画するとき、まず最初の事始めは、特定の時期における投資関連の様々な情報を収集することである。そしてそれを補強していき、「中心思想」なるものを構築する。
ロジャーズは自らの「ロジャーズ式投資の秘訣」について詳細な解説をしているが、その中でも、投資家が自分で勉強し、自分なりの現実的な方法を見つけだすことの重要性を強調している。
秘訣その一:投資分析表を自作
始めたばかりのとき、彼の総合分析表作りは至極簡単なものに思えるだろう。利益率(profit margin)、自己資本純利益率(return on equity)、対象企業の経歴や現況を列挙し、年を追うごとに、売り掛け金や在庫などその他のデータを追加していく。
企業の経営状況や傾向は、これらの数字から見てとれるようになる。総合分析表の時間軸は通常10~15年程度で、歴史的な視点からひとつの企業の発展を分析する一つの手段と彼は位置づけている。
1980年代末からコンピュータがアメリカで広く普及したが、彼は依然、原始的な紙とペンを手に持ち投資分析表を作っていくことが確実な道だと考えていた。コンピュータの記憶装置に保存されたデータを一切使わなかったのは、そのデータが企業の現状を反映しないことを懸念したからである。市場が強気相場のとき、どんなに振舞ってもかまわないが、市場が冷えているときには格別の注意を払わなければならないとロジャーズが言う。
ロジャーズが総合分析表を作ろうとするとき、さまざまな問題を考慮するが、中でも必ず押さえなければならない基本的要素は次の3つであるという。第一に、利益率と自己資本純利益率が上昇しているのか、低下しているのかを確実に見極めること。第二は、対象企業の経歴を可能な限り調査研究すること。そして第三に、売り掛け金や、貸借対照表上の数字をよく把握すること。これらは投資の前に必須の作業である。