秘訣その三:小さな数字から大局観を
人口の高齢化を逆手にとって莫大な利益を上げたことがあるが、この一件は彼の投資キャリアを語るうえで外せない出来事に数えられるだろう。1978年か1979年に、自分のオフィスでビバリーエンタープライズの年報を手にした彼は、驚くべき事実を発見する。当時この株は一株たったの2ドルだったが、この五年間、当企業の売り上げは増加を続けているのである。他の家庭医療看護の関連企業すべての年報を調べてみても、株価がただ同然に安いのにもかかわらず、業績は文句のつけようがないという現象がどの会社にも見られた。これは一体どういうことなのだろう? ロジャーズはここに目をつけた。
自作の総合分析表をあたってみて分かったのだが、1960年代末に、これら企業の株価が常軌を逸して高かった時期があった。そのときに「四季療養院」という企業が倒産し、それに伴って同業企業の株価がすべて暴落、落ちるところまで落ちた。これら企業が信用を失ったのは当然だが、注目すべきことに、今「復活」したこれら企業をまともに評価する人間が、ウォール街には一人もいないのある。これは絶好の好機ではないのか? 彼は直ちにこれら家庭看護企業について調査研究を開始した。
そして、アメリカの高齢化問題は相当深刻な段階に達していること、家庭医療看護業界への需要は時を置かずして急成長するだろうことを発見した。業界の株価急騰は目前に迫っていると判断し、クォンタム・ファンドは家庭医療看護企業の株を買えるだけ買い占め、他の関連業界に対しても買い入れを進めたという次第である。