8月に入ってから円高問題が再び世論の焦点になっている。特に、アメリカの経済状況が芳しくないことを受けて連邦準備制度が極端に寛容な金融政策を続けると表明した後、にわかにアメリカドルの日本円に対する下落傾向が強まり、8月10日以降、海外市場と日本国内市場の両方で1ドル85円という心理的な境界を越えている。1ドル80円を割った1995年の歴史的な局面が思い出されるが、その当時と比べると、現在の日本経済は株価、利息、失業率などの指標すべてが大きく劣っている。
現実的に問題となるのは、多くの企業の業績予測が1ドル90円の為替水準を前提に考慮されており、円高が続くと製造業への影響が再び浮きぼりとなってくるということである。1円ぶん円高に傾くごとにトヨタ自動車の営業利益は9%(300億円)の影響を受け、予測為替を安全めに87円と設定したホンダでも4%の影響を受けることになる。
今回の円高はアメリカドル単独の下落によるものであり、連邦準備制度が市場に対する通貨政策をよりいっそう緩めるだろうという観測が広がったことに起因している。また、ヨーロッパ諸国でもヨーロッパ債務危機をきっかけとしてユーロ安が進んでいるが、人々は政府の対応が遅いことに不満をぶつけており、いつまでも行動を起こさない日本政府と日本銀行にも批判の声が上がりはじめた。政権政党である民主党内でもこの問題に関して意見が多くあり、国会議員の中にも、為替市場に市場介入して円高に歯止めをかけるよう政府と日本銀行に圧力をかける者がいる。「非不胎化操作」の実施によって市場から生まれる基本通貨を吸収することを放棄すると同時に、円安の市場予測を誘導することを日本銀行に求めるものである。
しかし、おおかたの人はそう考えていないようだが、日本企業、特に製造業はバブル経済崩壊後も今に至るまで高い競争力を維持している。現在世界を代表する輸出大国はひとつ残らず対日本の貿易赤字を抱えており、なかでも韓国と台湾地域が際立っているが、輸出には日本の高水準の資本財と中間財が含まれている。また、日本の中小企業は多くが「製造業のオンリーワン」の理念を長年貫いて、重要な分野で極めて大きな市場シェアを持っており、為替相場に影響されるリスクをまったく持っていない。例えば、どの分野でもナンバーワンをとろうとするサムスン電子が売上規模と利益で日本の六大家電企業を追い抜かしたと言われ、ヒュンダイやキア自動車も市場シェアを伸ばし続けているが、韓国は今もって対日赤字の深みから抜け出せずにいる。これこそが注目すべき構造上の問題なのである。
このほか、アジア各国の通貨安定問題が実質的に、経済成長がアメリカを始めとする西方国家の過剰消費に支えられていることに端を発していることにも着目すべきである。為替の下落が利益をもたらすには、ほかの国の経済が非常に好調だという条件が必要になる。ところが、こうした状況はもはや存在しない。
中国の輸出に大きな問題が出てくるとすれば、根本的な原因は為替相場でなく外需にあり、そのことが最も懸念される。
為替相場が主権問題であることを中国外交部が強調すれば、内政問題に他国が干渉する権利がないことを主張していると多くの人は話をすりかえて解釈するが、そうであるならば、欧米が通貨下落を誘導したことにも我々は口を出せないことになる。人民元相場に関する雑多な意見を耳にするとき、本当の国益がどこにあるかを冷静に判断しなくてはならない。為替相場は中国自身の内部改革を実現させる手段であり、対外的には様々な政治的・経済的利益を手に入れる道具であると考えなくてはならないのであって、これは決してメンツの問題ではないのである。為替に関して日本が持ち込んだ数多くの面倒な問題も、我々中国は心理的な負担として捉えるのでなく、人民元改革を着実に進める材料とするべきである。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年8月30日