個人所得の低さと、それによりもたらされる消費・投資構造のアンバランスや国内外の需要構造のアンバランスなどが、中国経済の安定的で急速な発展や、経済発展モデルの転換を制約する大きな問題となっている。問題解決には、改革を引き続き深化させ、所得分配を合理的に調整し、都市部・農村部の個人所得の急速な増加を促進することが必要であり、また個人所得の「金含有量」(実際の価値)を絶えず高め、個人が手にした所得をより値打ちのあるものにして、個人生活の改善と消費の拡大において個人所得が一層大きな役割を果たすようにすることが必要だ。
▽「金含有量(実質所得)」引き上げには、まず所得の伸びが物価上昇を上回ること
個人所得の「金含有量」を引き上げるには、第一に個人所得の増加ペースが物価上昇ペースを上回らなくてはならない。物価上昇が速すぎれば、個人所得の伸びが物価上昇ペースに追いつかず、必然的に実質所得が縮小する。深刻なインフレが発生すれば、個人の財産が損害を受ける。このため中央政府はかねてよりインフレ観測をしっかりと管理し、物価安定に向けた各種の措置を取ると強調してきた。現在、広範囲で大幅な物価上昇が起こるとは考えられないが、一部の特殊な商品の価格が急激に上昇している問題には注意が必要だ。ある時期から、緑豆やニンニクなど少数の農産品価格が異常な値上がりをして、社会の関心を呼び起こしてきた。だがこうした農産品が個人消費に占める割合は限定的なもので、供給を保証し、今後の予測を安定させ、違法行為を法律に基づいて摘発・処分し、連鎖反応の発生を予防しさえすればよい。だが、ここ数年の住宅価格の急激な上昇は、等閑視しているわけにはいかない。一部の大都市では急騰する住宅価格に直面して、少なくない家庭が数十年貯蓄に励んでも、さらには今後10年から20年分の給与を前借りしても、家を買うことが出来ないという事態が起きている。こうした異常な資産の動きは、個人所得の「金含有量」を極端に引き下げただけでなく、大量の資金が不動産開発に集まり、多くの地方で国内総生産(GDP)がますます鉄筋コンクリートによって構成されるようになっている。このような状況は科学技術の刷新、産業のグレードアップ、構造調整にマイナスであり、また国の競争力向上や個人所得の持続可能な増加にとってもマイナスだ。