これまでの慣例によれば、毎年11月は鉄鉱石の年間契約価格の交渉が始まる月であり、鉄鉱石価格が決まる最もデリケートな時期である。当然ながら、今年も例外ではない。中国鋼鉄工業協会の羅冰生常務副会長は、先日開かれた記者会見において、中国と世界3大資源大手(ヴァリ、リオ・ティント、BHPブリトン)の新年度の契約価格交渉はすでに開始しており、現在、話し合いが進行中であることを表明している。
羅冰生常務副会長は何度も「交渉期間中はいずれも詳細な内容を外部に漏らしてならないことになっている」と述べ、交渉の様子は明らかにしていない。だが、交渉の折り合いがつかず物別れになってしまった昨年の契約価格交渉から1年近く経った今、話し合いの重点は、現在の四半期ごとの契約価格取り決め方法を、従来の年間契約価格に戻すことが出来るかどうかになっている。
羅冰生常務副会長は「四半期ごとの契約価格で1年間実際に運営してきたが、その効果はおもわしくなかったため、何らかの変更が必要だと思っている。中国の鉄鉱石輸入量は減少したが、輸入コストは50%増と高騰し、鉄鋼産業における上流事業と下流事業のバランスが大きく崩れている」と述べている。
羅冰生常務副会長によると、今年1~9月、中国の鉄鉱石輸入量は4億5,700万トン、前年同期比1,153万トン減で、CIF価格は平均121.7ドル/トン、前年同期比43.84ドル/トン上昇している。輸入総額は556億8,900万ドル、前年同期比191億6,200万ドル(約1,303億元)であった。この上昇率は、中国鋼鉄工業協会の統計データと比べると、大きく隔たっているのが分かる。中国鋼鉄工業協会のデータによると、今年1~9月、国内における中~大型鉄鋼メーカ77社の売上高総額は2兆2,509億3,900万元、前年同期比39.52%増で、売上利益はわずか640億元であった。業界全体の利益がわずか数百億元しかなかった原因の一つに、生産に用いた鉄鉱石の価格高騰が挙げられる。昨年より仕入れ値が1,303億元高くついた原材料により、生産コストを製品価格に転嫁できない鉄鋼メーカは低収益に苦しむことになった。
今の鉄鉱石価格は「独占+需給バランス」によって取り決められる。南京鋼鉄聯合有限公司の楊思明董事長は「製品価格に基づき産業の分野別の収益を分配するというのが最も合理的な方法である。それとは別に、1~2年後に、コークス用石炭および鉱石の国内自給率を40~50%まで上昇させることも目標に掲げなければならない。また、廃鉄鋼材のリサイクル技術を高め、鉱石の海外依存度を少しでも減少しなければならない」と述べている。
来年の鉄鉱石市場の予測が、今回の長期価格交渉にとって優位に傾くかどうかは、専門家の多くが明確な答えを避けている。なぜなら、鉄鉱石価格は今も高い値で輸出されているからだ。政策や経済の影響により、中国の鉄鋼材の売り上げが振るわなくなった今、鉄鉱石の輸入量が去年よりも落ち込むことだけははっきりしている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年11月2日