第一生命経済研究所が描くシナリオはさらに厳しい。2020年までに、ある段階で消費税を10%に引き上げたとしても、名目GDP成長率が1%にとどまっている状態では、2018年には、国と地方の債務残高は、国民貯蓄から負債を除いた純資産と並ぶことになる。こうした状況に陥れば、日本債務の消化は海外投資家に依存することになるが、日本の国債は金利が低いため、海外投資家を引き付けることは難しく、状況の打開には金利の引き上げが求められる。そうなれば財政負担のさらなる増加を招くことになる。
また少子高齢化の進展により、65歳未満の現役世代人口「生産年齢人口」が減少し、それに伴って貯蓄率も80年代の10%から現在は3%まで落ち込んでいる。近い将来、貯蓄額はさらに縮小するとみられる。日本が国内での国債消化をいつまで持続できるかは、現段階では判断がつかないため、2018年に日本は国家破綻(はたん)するとの大胆な予測も日本の学者から出ている。
破綻を回避するためには、消費税引き上げや歳出削減など、効果的な措置を講じることが日本政府に求められるが、菅直人政権はそのどちらにおいても、手をこまねいている状態だ。
消費税引き上げは日本で「鬼門」といわれる。昨年7月に行われた参議院選挙で、菅首相は消費税を10%に引き上げると公約したため、多数議席を野党に奪われる惨敗を喫し、ねじれ国会という不利な立場にさらされる結果となった。さらに今年1月4日の年頭記者会見でも、消費税引き上げを柱とした税制改革について、6月をめどに方向性を打ち出す方針を表明した。だが最大野党、自民党の谷垣禎一総裁は消費税の用途が不明と反対する構えを直ちに示し、協議を拒否した。いかに野党を協議の席につかせるかが難題となっている。