▽解決すべき多くの政策課題
中国はまだ、日本で高度成長期に出現したような様々な政策課題を完全には解決できていない。昨年は給与引き上げの波が全国を席巻した。これはかつて労働力の供給源だった農村で余剰労働力が枯渇し、中国が労働力資源が過剰な状態から不足する状態へと転換する「ルイスの転換点」を迎えたことを意味する、とみる人もいる。1960年代の日本も同じような問題に遭遇した。中国で給与引き上げのペースが加速すれば、中国は安価な労働力という強みを失う。また環境対策や人民元改革はまだ始まったばかりだ。
世界には、中国は2020年までに労働力減少期を迎えるとの見方がある。日本が経済成熟期にある現在直面する各種の問題に、中国もまもなく直面するということだ。労働力が減少すれば、社会保障などの負担は中国にとって一層重いものになる。
1978年の改革開放を契機として、中国は文化大革命の中でひとたび崩壊した国民経済
の建て直しに成功し、約30年後の今日には国内総生産(GDP)世界2位に躍進した。中
国が一貫して経済発展を首位に置いてきたからこそ、日本が40年かけて解決してきた
様々な問題を、中国は今、同時に解決しなければならないのだといえる。
経済問題だけでなく、政治改革や貧富の格差の解消も解決が待たれる。このような状況であるからこそ、経済発展が停滞すれば、国民から瞬く間に不満が噴出することが予想される。そうしたわけで、中国政府には高度成長を維持すると同時にバブルを抑制し、貿易不均衡の問題を解決し、貧富の格差を縮小することが求められる。
中国では最近、バブル当時の日本の政策研究が盛んだ。海外からの人民元切り上げ圧力に対し、中国政府は「日本の『プラザ合意』の二の舞にはならない」と表明し、不動産調整を慎重に進めて、日本のバブル崩壊のような事態を避けようとしている。貧富の格差解消を目指して、中国が日本のような相続税や地方交付税の制度を採用して所得分配を進めるかどうかが、今後の注目点になるとみられる。