▼産業の模様替えは「中国の特色」を考えねば
中国は「中所得国の罠」をかわさなくてはならないという共通認識はあるものの、研究者たちが提起する解決策はそれぞれ異なる考え方の上に立っている。
清華大学国情研究センターの主任である胡鞍鋼氏は、「十二・五(2011~2015年)」計画の根源的目標は、中国経済に「要因的な原動力から創造的原動力、内部成長の原動力へ転換するよう注力させる」ことであると考えており、「国際市場に頼りっぱなしではならず、内需拡大を拠り所としなくてはならない」としている。
企業が職員の収入を引き上げたり、政府が積極的に公共製品を投入して物価の上昇を抑えたり、財政・税務政策で収入不均衡の問題を調整したりといったことはみな、「内需拡大」の方法になる。しかしこれ以外にも、「新たな考え方」を提唱する学者がいる。
「80後」に属する新鋭の経済学者・高連奎氏は、「民衆の収入を引き上げる」効果が同じくらい得られる政策として、基礎商品の価格を下げることにより民衆の購買力と福利を向上させるようなものが考えられると述べる。同氏は「中国大形勢」という自著の中で、「低生存コスト型社会」を作ることを提唱している。
いま人々は収入の増加をただひたすらに望んでいるが、収入が増加しても幸福がもたらされるとは限らないと彼は主張する。なぜなら、収入が増えれば民衆の生存コストも上がるからである。逆に、給与水準が低く抑えられていても、生活必需品の価格が大幅に下がれば、生活の負担は大きく軽減されることになろう。中国のような人口の多い国では「低生存コスト型社会」が、日常生活の細かな部分から民衆の生存負担を減じてあげられる社会モデルになるのである。