▽ハイエンド製造業はシフト先に中国大陸部を回避
日本経済産業省は今年の4月に「東日本大震災後の産業実態」を実施し、その結果、製造業のサプライチェーンは7月までに80%回復し、10月には震災発生前の水準に戻る見込みであることが明らかになった。またハイエンド産業が拠点を海外へシフトし始めていることも同時に明らかになった。
注目に値するのは、日本の企業が相次いで生産拠点を中国大陸部ではなく、その周辺地域にシフトしていることだ。家電大手パナソニックは5月、100億円を投資して、台湾の桃園地区にスマートフォン(高機能携帯電話)や携帯電話などに使われる回路基盤の新工場を建設すると発表。また日本の大手半導体メーカー・ルネサス エレクトロニクスは自動車用半導体の委託生産に向け、シンガポールの企業と商談を進めている。東芝は韓国サムスン(三星)電子、米インテルと、次世代半導体の製造技術の共同開発を進めている。日本を代表する電気機器メーカー・キヤノンも福島工場で行っていた高級デジカメの生産を台湾・台中に移転させている。カメラ大手ニコンは仙台の工場からマレーシアへ生産拠点を移転する計画を立てている。中小型液晶パネル大手の日立ディスプレイズは、台湾の奇美電子(CMI)への液晶 パネルの生産委託を拡大させている。このように震災後、重要な部品のサプライチェーン再配置を進めている日本の企業の現状を見てみると、ハイエンド製造業は生産拠点シフト先として明らかに中国大陸部を避けている。
では東日本大震災発生後、日本の産業がサプライチェーン再配置を進める際、ハイエンド製造業は、なぜ生産拠点を中国大陸部ではなく、その周辺地域へシフトするのだろうか?