9・11事件から10年が経とうとしている。当時、関心の的であった対テロ攻撃の問題はすでになりを潜め、今、米国民が関心を寄せているのは米経済低迷についての問題である。この10年、アフガニスタン、イラク侵攻という2つの戦争で、米国が失ったものは大きかった。この「終わりなき戦争」に米経済は疲弊し、自ら首を絞める結果になってしまったのである。特にイラク戦争につぎ込んだ額は6,620億米ドルとも言われている。今後、米軍の撤退費用、帰還兵の治療、手当て、戦死者の遺族に対する賠償など、長期にわたるコストを推計すると、その数倍がかかると米エコノミストらは指摘している。
9・11事件は、米経済の転換期となった。9・11のテロが起きるまでは米経済はまず安定を見せていた。当時、米経済はインターネットバブルの崩壊から回復期に向かう途中にあり、北海ブレント原油先物は1バレルたった28米ドルで、原油収入により米連邦政府の財政は潤っており、将来の明るい兆しが見えていた。だが、9・11事件がすべてを変えた。今では原油価格は1バレル115米ドル前後にまで上がり、本年度の赤字予算は1兆5,800億米ドルに達している。長期化した戦争により、緊張状態から解放されずにいる米軍および情報機関は、テロリストの襲撃にあうなどの事件もあり、疲労困憊が続いている。