英紙「フィナンシャル・タイムズ」は10月13日、「米国人は人民元を好きになるべき」という見出しの記事を掲載した。以下はその内容。
米国とその他の先進国の生産性を高め、貧富の差を解消する方法はいくつかあるが、人民元レートを思い通りに動かすのはその一つではない。理由はこれまでに何度も述べている。
多くの人が中国製の商品は中国で組み立てられているだけだと思っている。アジア開発銀行研究所(Asian Development Bank Institute)の2010年のレポートによると、iPhoneの1台あたりの卸値は178.96ドルで、中国の組み立て作業で得られるのはそのうちのわずか6.5ドルであることがわかった。生産コストの多くは、低賃金国が製造する高精密部品にかけられているわけではない。これらの部品はすべて日本や韓国などの高賃金国で生産されている。
2005年6月に人民元の対ドル連動が解除されてから、人民元の対ドルレートは30%上昇した。中国のインフレ率が上昇し続けていることを考慮すると、人民元の上昇幅はさらに拡大すると見られる。それによる貿易構造の変化はないが、不思議なことではない。1985年の「プラザ合意」調印後、日本円は2年で約2倍に上昇したが、日本の輸出にほとんど影響はなかった。
中国の輸出の競争力が低下しても、雇用が米国などの高賃金国に大量に流れるとは考え難い。それどころか、バングラデシュやベトナム、インドネシア、メキシコのような低賃金国に流れる可能性が高い。
中国やその他の低賃金国を攻撃する発言には一種の民族主義のニュアンスも込められており、これが問題をさらに複雑にしている。近ごろ、イギリスのFTのサイト上で、「米国の労働者は、中国の体力があり奴隷のような労働者との競争にどうやって勝つのか」という書き込みがあった。こういった書き込みは珍しくない。このような見方は反論や検証に耐えることはできない。中国の数千万人に上る出稼ぎ労働者は搾取されることなど望んでおらず、多くのチャンスがあるため都市部に出てきた人たちだ。RBSの統計によると、過去20年間で、中国の製造業の労働者の平均賃金は10倍になり、西側諸国との差を縮めている。その差が完全になくなる日が来るかどうかは別問題だが、中国に人民元切り上げを急かせるのは何の意味もない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年10月14日