しかし、拘束力をもつルール制定に向けた取り組みが現在進行している。一つはTPP(環太平洋経済連携協定)。これは環太平洋諸国とアメリカの計8カ国が合意する可能性のある貿易協定である。この協定は11月にも協定の大枠を発表する見込みだ。
もう一つは現在アジアで進行している交渉である。それはASEAN10カ国とその他アジア諸国間の貿易協定を基礎に置いているが、中国、日本、韓国といったアジアの中心国が欠けている。しかし、「中日韓」の協定も合意に向けてついに動き出した。
これらの組織はそれぞれ異なったルールを定めているが、どのルールも他の経済体の利益を犠牲にすることで、加盟国を喜ばせようとしている。
我々が進めている新たな研究は、かすかではあるが前向きな解決案を示してくれた。その研究によれば、アメリカ主導の「TPP」は加盟国に利益をもたらすだけでなく、加盟国数の拡大をも刺激する。一方、アジア主導の交渉は「東アジア自由貿易協定(EAFTA)」の成立につながり、巨大な利益を生み出す。どちらの組織も規模が大きく、多くのアジア太平洋諸国(米中を除く)が両組織に加盟するだろう。そして、加盟国のほとんどが2大市場のどちらからも恩恵を受けることができる。