何かをけなすときに経済学の世界で「日本のような」という形容がなされるほど、日本の状況は混迷を極めている。もはや「日本」という言葉は、直る見込みのない悪癖や果てしのない衰退と同義なのである。西側諸国も日本に似た長期的経済衰退を続けており、欧米も日本のような未来を迎えるのではと考え始める向きが増えている。しかし、この運命は不可避なものではない。経済の衰退を避けようと思うなら、日本の事例から多くの教訓を学べばいいのだから。
一つ目の教訓は、過去が未来を決定するとは限らないということである。日本が犯した最大の失敗は、その経済体制が既に失敗していることを認めなかったことに他ならない。1990年代の時点で、政府主導で輸出と製造業に依存する日本式モデルは時々刻々と変化する世界経済から乖離していた。ところが東京の政策担当者はその経済モデルを諦めず、現在に至るまでそれに固執している。
欧米もこのような変化を求めぬ凝り固まった体制に陥る恐れがあるのだ。欧州は福利制度が充実しているが、その体制はもはや借り入れに頼らなければ成り立たない段階に来ているし、米国は自前の自由市場モデルを偏愛するがために、国民の嫌う国家からの干渉を受け、政府は急を要するインフラ建設にとりかかれないでいる。