東京経済大学の教授、対外経済貿易大学の客員教授の周牧之氏
まとめ
一連の対談で、もっとも印象深かったのは、インターネットの発展がコンテンツ産業の生存環境を急速に変化させているということだ。今、コンテンツ作品はネットによって世界の隅々まで配信され、国境を越えた人気とファンを獲得しているが、一方で無償や廉価を主体とした作品のネット流通が、著作権産業の生存モデルに破壊的な衝撃をもたらしている。対談中、期待感と焦燥感とがないまぜになった業界の大御所たちの困惑が感じ取られた。
著作権の尊重と保護は、クリエイティビティな才能と産業を育成するための基盤である。日本はまさに、著作権保護を重視することで世界第二のコンテンツマーケットを作り上げ、自身のクリエイティブ産業の将来性だけでなく、隣国の“韓流”クリエイターにまで生命線ともいえる利益の源泉を提供した。しかし、現行の著作権体系は、出版社やレコード会社、映像制作業者等の制作・流通会社の収益を過剰に重視し、原作者はごく一部の利益しか得ることができない。また、高額な作品価格が消費者に大きな負担を強いている。
ネットの衝撃がすべてのゲームルールを変えようとしている。最終的には、クリエイティビティの保護と、製作流通会社の権益確保、そして消費者の利益との間に、バランスのある著作権システムが作られるべきである。 問題は、誰が、どうやってネット時代の著作権システムとビジネスモデルを確立するかということだ。地球規模で展開する一大ネット市場において、いかにコンテンツ商品の新収益モデルを構築していくか、日本と中国がいまこうしたテーマで意見交換、討議を行うことは非常にタイムリーでありかつ重要である。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年3月29日