周牧之:日本の金融システムにも深刻な問題が存在しています。つまり、どの金融機関も手数料収入に頼る経営モデルに傾倒するあまり、企業融資に極端に消極的で、あえてリスクを冒そうとしません。
安斎隆:企業自体の投資も消極的になる一方で、ひたすら貯蓄、貯蓄です。個人消費も縮小傾向にあり、こちらも貯蓄に懸命です。しかし、こうした投資ナシ、消費ナシの状況は経済の停滞や税収減少につながり、国家も大量の国債発行で財政支出を維持せざるを得なくなってしまいます。経済とは、本来良い時も悪い時もあるものです。が、政府や政治家が経済衰退という現実的局面を無視し、財政的手段だけに頼って経済衰退を阻止するため、経済の荒波の中で淘汰されるべき多くの企業に救命措置を与えたものの、肝心の経済構造はまったく改善されていません。
周牧之:日本の生活文化産業には将来性がありますが、健康食品、化粧品、それからコンテンツ産業、どれをとってもみな中小企業が主体です。活力はあるのですが、金融面でのサポートは受けにくい。銀行は大企業や大プロジェクトの融資には積極的ですが、もっとも資金を必要としている中小企業や起業者には、なかなか融資が行き渡らないというのが現状です。金融業界の過度なリスク回避の風潮が、日本経済の活力を低下させているのです。
安斎隆:日本の金融は、土地、物、金融等の担保を必須条件にした融資モデルからいまだに抜け出せていません。また、優秀なアイデアや商業モデル、成功の潜在力を備える人材に対する融資の能力やシステムも確立されていません。クリエイティビティとそれを備える人材をいかに評価していくかが、将来の金融産業のキーであると思います。
周牧之:私は、ジーンズに金髪という身なりの才能ある人物が金融機関から起業資金を借りることができるようになったとき、日本の生活文化産業が飛躍的な成長をとげると確信しています。