中国国際交流センター情報部の徐洪才副部長の分析によると、インフレが労働者の生活コストを上昇させ、中国経済の世界との融合が進むのにともない、中国の労働者の給与水準も徐々に国際基準に近づいており、こうした要因が中国の労働力コスト上昇を招いたという。
▽短期間で欧米を追い越すのは不可能
中国の労働者の給与は本当に急速に上昇しているのだろうか。中国の労働力にはまだ優位性があるだろうか。専門家によると、海外機関の予測は誇大だという。
徐副部長によると、中国のローエンドの労働力がもつコスト的優位性は今後短期間で消滅することはありえない。その理由として3つの点が考えられる。第一に、指標をみると、米国の製造業における労働者の平均給与は中国の数倍に上り、中国が短期間で追いつけるものではない。第二に、労働力の供給を見ると、中国の農村には仕事を求める余剰労働力がまだまだ豊富にある。第三に、コストをみると、多国籍企業の工場移転には相当のコストがかかり、軽々しく行えるものではない。
国際通貨基金(IMF)の予測によると、中国の余剰労働力の供給は減少しつつあるが、完全な消滅は20年から25年の間のどこかの時点まであり得ないという。
張副研究員は、「中国の労働者の給与は今ではベトナムやラオスなどより高いが、アジア四小竜(台湾地区、韓国、香港地区、シンガポール)やブラジルなどの国・地域に比べればなお低く、一定の優位性をもっている」と指摘し、さらに次のように述べた。中国の労働力の絶対量のコスト上昇ペースはなお小さい。中国では長年にわたって所得分配制度の改革が行われてきたが、改革の歩みはまだそれほど大きいとはいえず、製造業の労働者の給与を先進国に比べるとかなりの開きがある。よって今後数年で中国の労働力コストが欧米の先進国に追いつくという見方はいささか誇張だといえる。