中国社会科学院世界経済・政治研究所の沈驥研究員は中国中央テレビ(CCTV)の番組で、中国の空母に使用しているアレスティング・ワイヤー(戦闘機が空母に着艦する際に、停止させるための鋼索状の支援設備)を、当初はロシアから購入する計画だったが破談に終わったことを明かした。
空母のアレスティング・ワイヤーは、世界でもアメリカとロシアしか製造技術を持っていない。「どこも売ってくれなかったので、自分たちで研究するしかなかったが、結果、製造に成功した」と沈氏は話す。
この出来事は、空母の製造によって、中国のハイエンド製造業のグレードアップがもたらされた典型的なケースとして大きく取り上げられた。
「しかし、中国企業が科学技術分野における研究や人材育成を確実に積み重ね、この空母の製造が生んだチャンスをしっかり把握しなければ、中国のハイエンド技術の向上には依然困難が多いだろう」と中国経済専門家である白益民氏は楽観視していないようだ。
かつて、日本の三井グループの傘下企業に12年間勤めていた白氏は、三井が今日まで大きく成長した、その事業拡大戦略に関する研究を行っていた。
三井グループの前身である三井財閥は小さな衣料品店から始まり、明治維新後は軍事企業の経営に携わっていた。軍事工業企業は財閥の持つ広大な市場に進出したことで、急成長し、民間企業に転身。軍事工業の技術もまた、豊富な資金の支えの中、大きな進歩を遂げた。太平洋戦争の終結まで、日本は相次いで29隻の航空母艦を製造している。