しかし、資金の流出には不確定要素が見受けられる。都市化の推進が新たな「投資熱」をけん引することで、貿易黒字に影響を与えると見られる。投資が輸入を促進することで、貿易収支の改善に繋がる。輸出の成長にも不確かな部分は多い。欧米経済の減速が続き、主要経済国で保護貿易主義が台頭する中、中国の労働力コストも上昇し続けていることで、輸出の伸びに影響が出ることが予想される。企業の海外投資を奨励する政策も資本流出を促進するだろう。加えて、国際経済の不確定要素も多く、政治的な問題による衝突や、新たな銀行資本規制「バーゼル3」に基づき義務付けられる自己資本比率引き上げによる銀行業への打撃など、世界の金融市場の流動性に影響を及ぼす要因は多い。
アナリストは「国際収支の黒字が再び上昇に転じつつある中、当面の急務は人民元為替レート形成メカニズムの改革を促進し、為替レートが硬直状態に陥ることによる経済へのダメージを避けることである」と指摘する。
世界的な流動性の緩和と世界経済の続く鈍化によって、国際資本の短期的な動きが目立っている。仮に為替相場が膠着すれば、海外資金の流出入が短期間のうちに頻繁に発生し、中国の経済発展にとってはデメリットとなる。資本流入が急速に拡大すれば、過剰な流動性を生む可能性があるため、黒字の蓄積、外貨準備高の増加によって、人民銀行(中央銀行)が自国通貨を受動的に放出する圧力が高まる。