安倍晋三首相や日銀の黒田東彦総裁には、第2のプラザ合意が行われることを懸念する必要はない。円相場上昇の許容度にしても、合理性にしても、1985年のプラザ合意のような基盤はもはやない。
真にアベノミクスに差し迫っている最大の不確定要素は、拡張的金融政策の推進を受け、日本経済が2%のインフレ目標を達成する前に、資産のバブル化のリスクに直面しなくてはならないということである。
黒田総裁率いる日銀は、白川方明前総裁の比較的保守的な姿勢を打開し、市場やメディアと対話する姿勢を強調し、経済専門家との意見交換を積極的に行い、政策変更の理由を外部に説明していくことを表明した。更に重要なのは、日銀が現在推進している「量的・質的金融緩和」(QQE=Quantitative and Qualitative Easing)は、金融政策を根本的に変えていくことを示している。日銀は操作目標をこれまでの無担保コールレート(オーバーナイト物)という金利から、マネタリーベースという量的指標に移し、今後2年間以内に1年1あたり60兆から70兆円のペースで、マネーサプライの規模を拡大する見通しだ。