しかし、別の角度から見ると、アベノミクスには楽観視できない面もある。黒田総裁の金融政策の中心となる目標の一つは、長期的なデフレに苦しむ日本で、2年以内に2%のインフレ率を実現することである。しかし、この数値の実現には2年以内はおろか、3から5年かけても難しいだろう。
日本のデフレは人口構造の変化及び所得と緊密に関係しており、日本は世界で最も人口高齢化問題が深刻な国である(高齢者の消費水準は比較的低い)。近年、国内の所得水準も概ね横ばいで、労働力市場は極めて柔軟性に欠けており、これらが日本の経済成長とインフレの実現を困難にしている核心的な要因である。
2%のインフレ率の実現を目指すには、現在の安倍政権の一連の政策では力不足である。たとえ、安倍政権がさらなる量的金融緩和策を打ち出したとしても、2%の政策目標を実現できるかどうかは未知数となる。金融政策の波及経路からかんがみると、金融緩和がまず波及するのは資本コストである。即ち、消費者物価指数(CPI)と関連する消費財の価格よりも先に、株式市場と不動産市場が上昇基調となる。