世界銀行元チーフエコノミスト、北京大学教授の林毅夫氏はこのほど海南省で、「2030年に、世界には3つの主要通貨が存在する可能性がある。まずは世界の準備通貨としての地位を占め続ける米ドル、次にユーロ、それから人民元も世界の準備通貨になる可能性がある」と語った。
林氏は、「人民元は世界の準備通貨、貿易決済通貨になり始めている。中国は世界最大の貿易国で、中国の現在の海外貿易のうち約25%が人民元建てとなっている。人民元は一部地域で、主要決済通貨になっている」と指摘した。
林氏はまた、「人民元が米ドルの代わりになるためには、大きな差を詰めなければならない。米ドルは世界の主要な貿易決済通貨であり、約60−70%の比率を占めている。世界全体から見ると、人民元の比率は5%未満だ」と述べた。
林氏は、「国際的な準備通貨になることは光栄だが、経済的な利益の面で大きな犠牲を強いられる。人民元が2030年に世界の主要な準備通貨の一つになったとしても、高額の準備通貨を持つ国の状況が悪ければ、現在よりも不安定な状態に陥る可能性がある」と予想した。
林氏は、「複数の通貨が競争を展開する場合、どの通貨も世界の準備通貨としての地位を維持しようとし、通貨発行を抑制する必要が生じる。通貨を発行しすぎれば下落が予想され、撤退や投げ売りが生じ、世界の準備通貨としての地位を失う」と分析した。
林氏は、「複数の主要準備通貨が同時に存在するという構造が、安定を維持するためには、次の前提条件を満たさなければならない。つまり、これらの準備通貨を発行する国の経済が健全であるということだ。この状況の中、これらの国家は自国の金融政策を引き締めるだろう」と指摘した。
林氏は中国経済の成長率の低下について、「短期的には中国の成長率を懸念する声があがるだろうが、中国の経済成長の空間は広大だ。短期的に見ると、中所得国である中国の産業アップグレードの空間は広く、インフラをさらに改善でき、環境も改善を継続できる。これらはいずれも、投資収益率が非常に高い分野だ」と話した。
林氏は、「中国の全体的な負債比率は40%ほどで、全世界で最も低い数値となっている。その他の国は一般的に100%を超え、中には200%に達している国もある。ゆえに積極的な財政政策の実施にも多くの余地が残されている。また中国の民間貯蓄も大規模で、中国はさらに巨額の外貨準備高を保有している」と語った。
林氏は、「これらの条件を上手く活用できれば、今年の経済成長率は問題なく7.5%に到達すると信じている」と述べた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2014年4月12日