中国市場からの撤退の意思はないというソニーだが、市場シェアの低下は、争うことのできない事実である。家電業界ウォッチャーの劉歩塵氏は、「ソニーの中国市場での衰退は、産業全体の大きな背景と密接にかかわっている。中国の家電ブランドが伸びてきたことで、ソニーブランドの強みは少しずつ失われている。中国市場でのソニーには、サービス不足やイノベーション不足といった短所があった」と指摘する。
家電市場を見渡すと、日本や欧州からやって来た多くの海外ブランドが少しずつ中国市場から撤退し始めていることがわかる。松下とソニー、シーメンスの3社の中国市場のシェアは合計10%に満たない。
「ソニーや松下などの日本企業の業績低下は、円高や高齢化、労働力コストの高さなどに起因している。競争の激しい消費家電業では、イノベーション意識の欠けた企業は生き残れない」と、中国家電マーケティング委員会の洪仕斌・副理事長は指摘する。
ソニー経営者となった平井一夫氏は就任後、固定資産を業績に変えることによってソニーの赤字からの脱出をはかった。「ソニーはここ数年、ビルの売却、工場や生産ラインの停止、業務の大幅な外注などに取り組んできた。損失の泥沼から脱却するためには核心競争力の強化が必要だが、ソニーは現状でこれを達成できていない。ソニーは、重点市場や重要分野からの撤退を選択するしかなくなっている」と、産業経済ウォッチャーの梁振鵬氏は語る。