▽日本の動き
インド鉄道の全長は世界トップクラスで、一日の運行本数は約9千本に達し、乗客のべ2200万人を運ぶ。だが英国の植民地時代に建設された鉄道システムは長い年月の中でメンテナンスが行き届かなくなり、運行の効率が低いだけでなく、危険な事故も多発している。
インドのモディ首相は14年に就任して以来、インドの「高速鉄道の夢」を語ってきた。日本はここにインド市場進出のチャンスを見いだした。
ムンバイ・アーメダバード高速鉄道は日本の技術輸出の旗艦プロジェクトで、投資額は170億ドル(約1兆8904億円)に上り、うち80%が日本からの優遇条件での円借款で、年利はわずか0.1%だ。通常は30年の償還期間も50年に延長していて、これまでにない破格の優遇条件だといえる。
アナリストは、インド初の高速鉄道に対し、日本側は「もうけゼロで評判を取る」ような超低金利の借款を提供し、まずは市場に参入し、長期的視点で配置を進め、日本の技術や基準に対するインドユーザーのロイヤリティを高め、ひいてはインド市場の未来から日本が得る利益を拡大したいと考えている、と指摘する。
同高速鉄道はインドの国家級工業プロジェクトであるデリー-ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)の3分の1をカバーするに過ぎない。またDMICはモディ政権が打ち出したデリー、ムンバイ、チェンナイ、コルカタを高速鉄道で結ぶ「ダイヤモンドの四角形」計画の一部に過ぎない。規模から考えると、同高速鉄道はインド・日本の協力が行われていることを示す「前菜」程度の役割しか果たさないといえる。