サムスン電子が天津市に持つスマホ工場が12月31日に閉鎖されるという情報が、広く注目を集めている。サムスンは同時に天津市で24億ドルを投資し、世界最先端の動力バッテリー生産ライン、車載用MLCC工場などを建設する。サムスンの「一進一退」からは、中国の産業モデルチェンジ・アップグレードをうかがい知ることができる。
近年「人口ボーナス」の減少に伴い、人件費が高騰を続けている。労働集約型の多くの外資系企業が、ベトナムなどの人件費が安い地域に産業をシフトさせている。また中国の大学が募集拡大で蓄積した「エンジニアのボーナス」が引き出され、中国の新興産業に対する外資の投資をさらに拡大している。
中国の産業のモデルチェンジとアップグレードには痛みが伴う。専門家は、供給側構造改革をさらに加速し、減税と費用削減を拡大し、人件費高騰の製造業、特にハイエンド製造業への衝撃を弱めるよう提案した。また資金調達問題の解消といった措置により零細企業を力強く支援し、就業の基礎を安定させる必要がある。
人件費の窪地に流入
サムスンの中国生産ラインの相次ぐ閉鎖は、市場シェアの持続的な低下と関連している。
IDCのデータによると、サムスンの今年第3四半期の中国スマホ出荷台数は約70万台で、市場シェアは2016年の5.5%から2017年の3%未満に低下した。さらに2018年第1−3四半期には、0.9%まで低下した。
さらに重要なのは、「人口ボーナス」の減少後、中国の人件費が高騰を続けていることだ。
スマホ生産ラインだけでなく、サムスンは今年4月にも基地局設備などのネットワーク設備を主に生産する深セン工場を閉鎖した。韓国人取締役6人を除く全従業員が、4月末までに工場を去った。その一方でサムスンはベトナムなどでの投資を拡大している。サムスンの2017年までの対ベトナム投資は累計75億ドルにのぼり、16万人分の雇用枠を創出した。2017年の輸出額はベトナム全体の20%を占めた。
天津サムスン通信機器ラインの労働者の月給は約4500元だが、ベトナム人労働者の月給は約1630.85元だ。中国と比べ人件費の強みがある。
ある大型証券会社の電子業界研究員である王剛氏(仮名)は、中国証券報の記者に「またベトナムは週休一日制で、土曜日は通常の勤務日で残業代がかからない。中国での工場設立と比べ、残業代も浮くことになる。さらにベトナムは原材料なども非常に低コストだ。ベトナムの産業チェーンの現地化率が上がるにつれ、物流などのコストも下がる。さらにベトナム政府は外資による工場建設に対して、税収面で非常に大きな優遇措置を取る」と話した。