野村総研の分析チームは、この一連のデータは中国不動産市場の急速な下落を示すと指摘。野村総研の最新研究報告は、中国不動産市場はターニングポイントにさしかかり、一部都市では不動産市場政策の緩和の兆しが見られるものの、中央政府の不動産政策に対する明確な方向転換を反映しておらず、不動産業界調整政策の全面的な緩和を意味していないと示した。政府の不動産市場政策における立場が短期内に大幅に変わる可能性は低いという。さらに、12月21日に終了した中央経済作業会議は、「不動産市場の健全な発展の長期的メカニズムを構築し、家は投機取引するものではなく住むものだという位置づけを堅持する必要がある」と強調した。市場アナリストは、「投機取引しない」という位置づけは揺らいでおらず、短期内に不動産調整を全面的に緩和し不動産市場を再び刺激して需要を安定させる可能性は極めて低いと見ている。
シンガポール、オーストラリアも下落の波に呑まれる
シンガポールとオーストラリアも今回の不動産市場低迷から逃れられなかった。世界一コストの高い都市の1つであるシンガポールの不動産価格は2018年第4四半期に6四半期ぶりに下落し、うちゴールデンエリアの住宅価格の下落幅は1.5%に達した。2008年の世界金融危機以降、米FRBの量的緩和策の実施により大量の資金がシンガポール不動産市場に流れた。外資の流入はシンガポール不動産市場の持続的上昇を促し、アジアで住宅価格が2番目に高い都市になった。
アナリストは、シンガポール住宅価格の下落要因はFRBの利上げによる資金の米国への還流、流動性の逼迫だけでなく、強大な原動力である中国人バイヤーの需要が大幅に低下したためでもあると見ている。ブルームバーグは、シンガポール住宅価格の主な下落要因は政府の政策だと分析。クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドのシンガポール研究主管のクリスティーヌ・リー氏は、シンガポール当局が住宅価格の上昇を抑制するために実施した「冷却措置」、および世界の貿易摩擦、株式市場の変動が高級住宅市場にダメージを与えたと同時に、ゴールデンエリアに新築物件がないことも下落要因の1つだと指摘した。