屠氏は、この難題を解消するためにはまず、アルテミシニンの働きのメカニズムを明らかにするべきと考えた。屠氏のチームのメンバー、中国中医科学院アルテミシニン研究センター研究員の王継剛氏によると、アルテミシニンの人の体内における半減期(薬の濃度が生物の体内で半分になるまでの時間)は1、2時間のみと短い。また臨床上推奨されているアルテミシニン総合治療法の期間は3日で、アルテミシニンが殺虫効果を発揮するのはわずか4−8時間のみ。既存の薬剤耐性株はアルテミシニンの半減期が短いという特徴を十分に活用し、生活周期を変えるか一時的に休眠状態とすることで殺虫の敏感な期間を回避している。またマラリア原虫のアルテミシニン総合治療法で使われる補助薬も明らかな薬剤耐性を生み、アルテミシニン総合治療法の効果を損ねる。
3年以上の科学研究により、屠氏のチームは「抗マラリアメカニズムの研究」「薬剤耐性の原因」「治療手段の調整」などの面で新たな進展を実現し、新たな治療プランを掲げた。まずは薬の使用期間を適度に延長し、3日を5−7日にした。次にアルテミシニン総合治療法で薬剤耐性がついた補助薬を変更することで、治療効果を直ちに発揮する。
屠氏は、アルテミシニンの薬剤耐性の難題を解消することには、次の重大な意義があるとしている。まず、世界のアルテミシニンの研究開発方向を示した。今後長期に渡り、アルテミシニンは依然として人類の抗マラリアで最優先される高効率薬品だ。次に、アルテミシニン抗マラリア薬は割安で、一度の治療に数ドルしかかからない。マラリアが流行するアフリカの多くの貧困地域の人々に適しており、世界のマラリア消滅の目標達成を促す。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2019年6月18日