米NYタイムズ(電子版)は4日、「貿易戦争に負けようとしているトランプ氏」と題した記事を掲載した。筆者はノーベル経済学賞を受賞した米国人のポール・クルーグマン氏。記事の要旨は下記の通り。
米国のトランプ大統領の「貿易戦争は良いことであり、勝つのも容易だ」という発言は「迷言」として歴史に残るだろう。これは傲慢と無知が重要な政策決定を促す力になったという悪い例になる。
なぜならトランプ氏が実際に、自分で仕掛けた貿易戦争に勝っているわけではないからだ。確かに彼の関税は他国の経済を傷つけたが、同時に米国も傷ついた。しかも他国に重大な政策変更を強いるという、トランプ氏が設定した目標が達成に向かう兆しはない。
トランプ氏の貿易戦争が失敗に向かっていると言うのはなぜだろうか。中国は経済の超大国であるが、米国の中国からの輸入が対中輸出を大きく上回っていることから、中国は米国からの圧力に屈しやすいと考えられがちだ。それではトランプ氏はなぜ、その経済の意志を中国に押し付けられないのだろうか。
これには3つの原因がある。
まず、簡単に勝てると思うことは、いびつな自己中心主義を反映している。要職を占めている多くの米国人には分からないだろうが、米国は独特な文化・歴史・一体感を持つ唯一の国ではなく、自らの独立を誇りとする唯一の国ではなく、外国からのいじめに屈し譲歩するのを極端に嫌う唯一の国ではない。「国防にいくらカネを出しても構わないが朝貢にはびた一文出さない」は米国独自の観点でもない。
具体的に見ると、すべての国のうち米国に屈服・投降するような協定に合意するのは中国だけという考え方は、まったくもって荒唐無稽だ。