中央銀行が先日に発表した「2019年消費者金融素養調査の概要報告」が注目されている。ひときわ目に着いたデータが、「中国人のクレジットカード保有率が昨年、2割近く増加した」だった。今年第一四半期、クレジットカードの支払期限が半年を過ぎての未払額が797.43億元に上った。9年前の10倍近い額である。
消費の先送りは少なくなり、クレジットカードの未払いは急増している。つまり中国人は貯蓄しなくなり、消費を好むようになったように見える。
専門家によれば、ことはそれほど単純ではない。他の国と比較した場合、中国の貯蓄率は依然としてトップクラスだ。人々の貯蓄観の変化は、中国の内需型経済システムが徐々に構築されていることで説明できる。しかしある種の人々、特に若年層が「クレジットカードの奴隷」から「クレジットカードの主」へと変わるためには、過度な消費を避け、正確な価値観と消費観を築き上げる必要がある。政策保障に問題なく、若者の精神が普通なら、自然と消費に走るものだ。
「収入がない時、貯金はできない。収入があっても、特に貯金はしない」。24歳の娄雲さんは働いて2年になる。彼女は毎月、給料をアリペイにチャージする。支払うべきローンは支払い、残ったお金は定期理財などに使う。「お金を増やしたいなら、できるだけ稼ぐこと。貯金することではない」というのが彼女の考えだ。
現在、娄雲さんのような考えの人が増えている。中国人民銀行が先日に発表した「2019年消費者金融素養調査の概要報告」によると、消費と貯蓄に対する態度に関する質問で、大部分の人(79.03%)が「今日のお金は今日使う。明日のことは明日考える」ことに「あまり同意しない」、「全く同意しない」と答えている。しかし2017年と比較すると、「消費の先送り」を好む人がやや減少し、0.37ポイント下げている。
「消費の先送り」とは、自分の財産を貯蓄し、今後するであろう消費に備えることだ。「消費の先送り」を好む人が減少したということは、貯蓄せずにすぐ消費する人が増えたことを意味する。統計によると、中国人の貯蓄率はピーク時に37.3%に達した(2008年)が、最近ではそれが減少に転じている。
対外経貿大学国際経貿学院貿易学部の楊軍教授は、「一般的に、消費の先送りをする原因は2つある。1つは未来の支出に対する各種の不確定性のため。もう1つは高い金融収益を獲得するためだ」と指摘する。
現在、中国の新しい消費者が徐々に労働市場の主体になりつつある。彼らは目の前にある個人生活の品質向上を求めている。生活水準の向上や社会保障体制の整備に伴い、また、減税政策が浸透するに従い、今後の就職、教育、健康医療などの不確定性が減少したことから、人々の全体的な消費力が上がっているのだ。それ以外、現代金融の急速な発展によって、個人や家庭が短期的、中長期的資金を得やすくなっている。それらは各種の急な支出に対応できるし、そのコストも明らかに安くなった。