さらに蔡博士は日本について、「2020年までの排出削減目標として1990年比で25%削減すると表明している。ただし、他国と同様、全ての経済体が排出削減に向けた取り組みに参加することを条件としている」と指摘する。
これに対し、途上国内部では、アフリカの一部の国々と小島嶼国はコペンハーゲン合意が自国の利益を損なうと主張し賛成票を投じなかったため、COP15 は法的拘束力のある合意文書を採択することができなかった。
これらから、COP15が成果をあげられなかった原因を、単純に先進国と途上国の2大陣営の対立に求めることはできないと言える。
先進国と途上国の間の隔たりは、「共通だが差異のある責任」の原則が最大の要因となっている。これについて、蔡博士は「途上国と先進国の2大陣営はいずれもこの原則を認めているが、これに対する解釈と重点の置き方はそれぞれ異なっている」と指摘する。
「先進国が強調するのは『共通』だ。地球は我々皆のものであるから、排出削減は皆が共に実現する必要があると認識している。一方、途上国が特に強調しているのは『差異ある』という点だ。現在の地球の気候状態は、過去200年間の先進国の高いレベルの工業化によって相当程度もたらされたので、先進国が歴史的責任を負い、排出削減の歩みを速めその実現に力を注ぐべきであり、途上国は自国の二酸化炭素排出量を緩やかに削減すればよいとしている」と詳しく分析する。