排出削減の議論の中で、先進国は1つの経済体全体の排出量に、途上国は1人当たりの排出量に重点を置いている。
また、資金の面では、米国のヒラリー国務長官が途上国への資金援助を表明したが、前提条件として途上国の排出削減参加およびBASIC4カ国の排出削減作業の透明性確保を挙げた。だが、途上国は先進国の資金援助を果たすべき義務と見なしており、無条件の資金提供を要求している。技術移転の面では、技術は基本的に企業が研究開発しその知的財産権を有しているため、途上国への無条件の移転は不可能と先進国は強く主張する。このように途上国と先進国の間には、資金と技術移転という非常に重要な面で隔たりが生じている。こうした点から、2大陣営の相互対立およびそれぞれの内部の矛盾と隔たりにより、COP15が法的拘束力のある枠組みを構築することができなかったことは容易に理解できる。
オバマ大統領はスピーチの中で、「現実社会における二酸化炭素排出は排出以外の何ものでもない。今後の排出は単なる数字の問題であり、客観的事実として存在する」と述べたことがある。蔡博士はこれについて「このようなとらえ方により、中国とその他の気候変動対応能力が劣る国との間の矛盾がさらに顕在化することになる」との見方を示す。その原因として以下の点を指摘する。「今後の矛盾は相当程度、温室効果ガス排出大国と気候変動対応能力が劣る国との間に生じる。今後、排出大国には米国、その他の先進国および途上国の中国が含まれる。気候変動は様々な自然災害を引き起こすことになる。例えば深刻な旱魃、水不足、島嶼国周辺の海面上昇などである。こうした場合、小島嶼国にとって致命的な脅威と損害が発生し非常に深刻なものとなるだろう。同様に途上国である中国にとっても、外交面や国際的なイメージに関わる非常に大きな問題となり、小島嶼国との間の摩擦も次第に大きくなるとみられる」。