天然資源の獲得は、産業経済活動の根幹にあたりますから、国家にとって軍事と同様に安全保障の問題に直接的に関わります。その点に置いて、国家政策・民間企業経営の双方がともに獰猛に国外天然資源の獲得にむかっている中国と、民間企業経営先行で国外天然資源の獲得にむかっている日本では、異なった結果が出ることは明らかであると思われます。もちろん、日本の産業政策として(経済産業省を中心として)そうした国外天然資源の獲得にむかっていることはあるわけですが、中国のように2つの社会セクターが「完全に」連携したフォーメーションと比べれば、それは弱いわけです。
一方で、アフリカ諸国からみれば、今後のグローバルビジネスチャンスを狙う場合において(多重債務国からの脱却、発展途上国からの脱却)、広大な潜在的市場を有する中国と、世界でも最高水準の全産業的技術ノウハウを有する日本のどちらと手を組んだほうが便益が高いのかというところでの選択となりますね。ここでは、厳密では相手国の国家政策的な圧力がないと仮定すれば、二者択一的ではありませんから、生産の段階で日本との技術ノウハウ提携を強化し、輸出販売の段階で中国との貿易協定を強化するという方向に流れるのが自然かなと思われます。
しかし、注目すべきは、中国への輸出を増加させるということがアフリカ諸国にとって便益が高いとするならば、中国の市場に対応した製品・サービス品質(の水準)があればよく、決して日本の「過度に最高水準」の技術ノウハウは必要ないかもしれないということなわけです。中国企業の有する技術ノウハウが習得できれば十分ということになります。つまり、中国が官民が一致した中でアフリカに進出すれば、アフリカ諸国は、中国の技術ノウハウ(の水準)を有した中国企業と提携し、アフリカ現地資本企業との合弁などにより生産をします、その上で、中国の市場に進出すればよいということになりますね。