ここまでの状況になると、日本の工業生産力が落ち込むテーマとなり、また大きな問題として、雇用が減少します。いわゆる産業の空洞化が、日本政府によってさらに促進されてしまうという結果になるわけです。「関税」政策の実施によって、マクロというよりもむしろミクロの企業行動問題として把握し難い問題に、日本国が直面することになりますね。このようにして、当該「関税」政策によって、日本の産業構造の特性上、「恩恵」をうけていた対象を単独に特定するのが難しいため、日本政府はどれだけ深い程度まで、その加工貿易バリューチェーンによるコストベネフィットを計算しているのか気になるところでありますね。
これらはより細かく、今回除外対象となった品目についてひとつひとつ分析し、そしてそれを原材料とする日本の企業行動をトレース(追跡調査)して観察することも面白いので、チェックしてみるとよいかもしれませんね。「恩恵」が無くなるのは、中国原材料輸出企業か、日本の加工貿易企業か、そしてその双方であるとしたらどの程度の割合で、日本と中国の国家はどちらにとってどれだけメリットがあるのか、この詳細な分析には興味は尽きないものであります。
僕は中国と日本は一長一短という、いわば「諸刃の剣」よりも、さらに日本にとってはデメリットが多い問題だと僕は分析しています。苦慮するのは、中国企業の販売先マーケットの減少、日本消費者の価格転嫁による負担増でもなく、日本加工貿易の屋台骨の一部なのでは?日本の雇用の減少なのでは?長期的な日本産業力の低下になるのでは?実施するにしても、もう少し品目分析・バリューチェーン分析を重ねては??・・・と思った次第です。
今年最後のブログ、こちらの文末まで読んでいただいてありがとうございます。中川コージはいつも「簡単に説明できることを難しく説明」してしまっているなぁと自己反省いたします。来年も相変わらずのわかりにくい表現が多いかもしれませんが、それを積極的に改善しつつ、一方で、より深く経営学的なアイディアが入ったコラムにしていきたいと思います。どうぞ来年もよろしくお願い致します。
それでは、皆さん美味しいおせちを!そして良いお年を!
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年12月29日