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第25回 日中両国の人たちのクリスマスの過ごし方
発信時間: 2008-12-26 | チャイナネット

欧米諸国ではクリスマスは祝祭日で、学校・職場は休みですが、日本では休みではありません。しかし、クリスマスを祝うことは日本でも定着した習慣と言えます。日本人に対して「この一年間に経験した(する)年中行事は何か」と質問したところ、「家族の誕生祝い」が82%、「クリスマスを祝う」が66.5%でした。また「贈り物をした機会」ベストスリーに、誕生日とクリスマスが入っています。(以上、博報堂生活総合研究所調査。2008年12月24日付日本経済新聞報道。)

日本でのクリスマスの一般的な習慣としては以下があります。(キリスト教信者の人は教会にも行くでしょう。)

● クリスマスツリーをたて、豆電球などで飾ります。

● 恋人どうしで、特別にレストランで食事をします。

● 子供はサンタクロースからプレゼントをもらいます。多くの日本の子供達(10歳くらいまで)は、12月24日の夜、靴下を置いておくと、サンタクロースがその夜やって来て、プレゼントを靴下の中に入れてくれると信じています。25日朝起きた時に子供はプレゼントを見るわけです。実際は、親がプレゼントを用意して、夜、子供が寝ている枕元などにプレゼントを置いておきます。

● クリスマス・ケーキを食べます。店でもたくさんケーキを売っています。昔はデコレーション・ケーキという丸い形のケーキだけでしたが(写真右)、最近はフランス的なブッシュ・ド・ノエル(木の形をしたケーキ)(写真左)も売られています。

● アメリカ人は七面鳥を食べますが、日本人は七面鳥は殆ど食べません。その代わりにロースト・チキン(鶏肉)を食べる人が多いようです。

● 南フランスなどでは、イエス・キリストや聖母マリアなどの人形を飾り、キリスト誕生の場面を再現する習慣がありますが(「クレシュ」といいます)、この習慣はまだ日本ではあまりはやっていないようです。

中国で各種調査をしている「上海サーチナ(サーチナ総合研究所)」が本年11月に、北京、上海、広州で、20歳から49歳までの合計900人の中国人(男女半々)に、クリスマスで特別に何かするかについてアンケート調査したところでは、以下の結果がでました。

この結果を見ると、約6割の人がクリスマスに特別に何かをすると答えており、クリスマスを祝うことが中国人の間にも浸透し始めていることがうかがわれます。

私が北京市内のある大学で講演をした時、大学生から、「中国でクリスマスを祝う習慣が広がっていることについてどう思うか」と質問されたことがあります。それに対して、私からは、「お祝いするか否かはともかく、アジア人にとっては、欧米の歴史・考え方を理解するために、キリスト教文明を理解することは必要ではないか。特に今後世界で指導的地位に就く中国人の若者は、世界の様々な文化・文明を理解する必要があると思う」と答えました。

キリスト教は日本には1549年に初めて伝えられました。キリスト教の中国への伝来が、唐の太宗の時代に景教として伝えられ、13世紀にはローマ教皇に派遣された宣教師が活動を行ったのに比べると、日本へのキリスト教の伝来は遅かったと言えます。

日本にキリスト教を伝えたのは、フランシスコ・ザビエルというポルトガル人の宣教師でした。彼は、イエズス会により派遣され、1949年8月から1951年11月まで約2年3ヶ月間、日本に滞在し、九州から京都まで旅をし、布教活動をしました。フランシスコ・ザビエルは、日本からイエズス会あてに手紙を書き、「日本人はどの国民より何事でも道理に従おうとします。日本人はいつも相手の話に聞き耳をたて、しつこいほど質問するので、私たちと論じ合うときも、仲間同士で語り合う時も、話は全く切りがありません。日本人は生まれながらにして好奇心が旺盛で、何でも知りたがります。」と当時の日本人の様子を書いています。日本人について良いことばかりではなく、彼から見て、日本人の問題点についても指摘しています。また、キリスト教の教義を聞いた日本人がどのような質問をし、どう戸惑い、あるいはどう帰依したかについても書いています。フランシスコ・ザビエルは日本での布教活動の後、中国で布教活動をすることを希望していました。彼は手紙の中で、中国と中国人について、それまで見聞したわずかな経験をもとに高い評価を述べています。1552年7月、広東の近くの上川島に到着しましたが、熱病にかかり、中国で布教活動を開始する前の12月に逝去しました。(ピーター・ミルワード著、松本たま訳『ザビエルの見た日本』(講談社学術文庫))

朝日新聞によると、同新聞が創刊された1879(明治12)年の12月に、クリスマスについての報道があるそうです。1899(明治32)年には、クリスマスツリーについての記事があります。大正時代(1912年~1926年)には、クリスマスの飾り付けをしたり、プレゼントを贈ったりする習慣が根付いたとのことです。(2008年11月29日付朝日新聞報道。)

日本のキリスト教信者は、全人口の1%前後と言われています。歴代総理大臣の中にもキリスト教信者が何名かいます。日本人は、キリスト教の自己犠牲、愛、献身、そして日本人によるキリスト教受容などをテーマにした文学・映画・演劇にも親しんでいます。日本にはキリスト教の諸組織が設立した学校(幼稚園から大学まで)、福祉施設が多数あります。クリスマスの季節には、日本でも救世軍(「軍」といっても軍隊とは関係ありません)というキリスト教団体が募金活動を行い、経済的に恵まれない人たちを支援する活動をしています。キリスト教の慈善活動の考え方は、幅広い共感をよんでいると言えます。このようにして、キリスト教の考え方に親しんでいる日本人は少なくないと言えます。

(井出敬二 前在中国日本大使館広報文化センター所長)

「チャイナネット」2008年12月26日

 

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