第31回 孫文、周恩来も訪れた神田の古本屋街

japanese.china.org.cn  |  2009-01-14

第31回 孫文、周恩来も訪れた神田の古本屋街。

タグ:孫文、周恩来も訪れた神田の古本屋街,井出敬二,神田神保町,全国古書籍商組合連合会

発信時間:2009-01-14 10:23:45 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

1月10日、私は神田神保町の古本屋街に行って来ました。日本では古本屋がとても多く、特に神田神保町は150軒以上の古本屋が集まった、世界でも珍しい街です。(中国には骨董品屋の集まった区域、ビルなどは各地にありますが、古本屋の集まった街、ビルというのは寡聞にして知りません。)この神田神保町の古本屋街は、130年もの歴史を有しています。またこの街には、古本屋以外に、新刊の本屋、外国の本を専門に扱う本屋もいろいろあります。最近はインターネットでも古本を検索・購入できますが、それでも古本屋を見て回るのは、「こんな本が出版されていたのか」と、いろいろな本を知ることができ、楽しいものです。この古本の街をご紹介したいと思います。(神田神保町のオフィシャルサイト

(以下の記述では、神田神保町の古書店街の業界誌「日本古書通信」編集者として1936年(昭和11年)から72年間、街を見続けてきた“神保町の生き字引”と言われる八木福次郎氏(93歳)の著作『古本屋の手帳』(平凡社)も利用させていただきました。)

● なぜ、神田に古本屋街ができたのか?:明治維新(1868年)後、多くの大学(注)が神田周辺に作られた。そのため、多くの学生たちがこの地域に住むようになったから。

(注)東京大学、学習院大学、順天堂大学、お茶の水大学、東京医科歯科大学、東京理科大学、専修大学、明治大学、中央大学、一橋大学、日本大学(大学の名称は設立時には別の名前であった場合などを含む。多くの大学が、その後神田から移転した。)

● 神田の古本屋の歴史は?:130年間の歴史がある。1890年代(明治20年代)に古本屋も含めた本屋が神田に集中するようになり、20世紀に入ると(明治30年代になると)更にその数が増えていった。

● 古本屋が発展した契機は?:関東大震災の後、本を求める日本人が、古本でも良いのでほしがり、古本屋が発展した。昭和の時代に、一冊一円の「円本」という廉価な本の全集(日本文学、世界文学、世界思想、世界戯曲、世界美術、経済学、マルクス・エンゲルス、児童文学、漫画など)が続々出版され、大量の本が一般市民にいきわたるようになった。それらが古本市場に流入して、古本屋の発展を促した。

● 現在、日本には古本屋が何軒あるか?:全国古書籍商組合連合会に加入している古本屋は約2400軒。

中国の人に、古本屋が日本で発達していると説明すると、以下の質問を受け、私から説明をしています。

(質問)なぜ、古い本を買うのか?

(答)絶版になって新刊の本屋では手に入らない本でも、優れた本はあります。また古本屋で本を買えば安く買うことができます。

(質問)古い本を見て、古い知識を得ても、現代には役立たないのではないか?

(答)確かにコンピューター関連などの理科系の本は古い本では意味が無いので、神保町でも扱っている古本屋は少ないようです。神保町で売っている古本は、歴史、文学、哲学、思想などの人文・教養関係の本が多く、古くても意味を失わない本です。また、浮世絵などの美術品、歴史的な本(たとえば江戸時代のもの)や、音楽、戯曲、映画、芸能、アニメ、漫画などの特定の分野の本を専門に扱っている店もあり、これはそれぞれの研究者、趣味の人たちにとっては大変貴重な本を扱っているということです。

(質問)大学の教科書や参考書などは、大学・教授を通じて買う必要は無いのか?

(答)日本では、どこの本屋で買っても問題ありません。だから、大学生で卒業する時などに、教科書、参考書類を古本屋に売る人が多いようです。そしてお金の無い学生は、古本を買います。

実は神田は中国との関係もいろいろあります。

● 20世紀はじめには、中国から多い時には2万人もの留学生が日本にいましたが、その7,8割が神田に下宿し、神田書店街の良いお客さんであったそうです。

● 中国人留学生が多かったその頃には、中華料理店も神田にたくさんあり、中華街の様相を呈していたそうです。孫文、周恩来も日本に滞在・留学していた当時、これらの中華料理店も含め、神田界隈に立ち寄っていたということです。勉強・研究熱心な孫文、周恩来は、神田の書店街にも当然足繁く、訪れていたのではないでしょうか。

● 戦前、戦中も、中国から本を求める人が神保町に来たし、中国に古本を輸出したこともあったそうです。

● 中国を研究する学者は日本には昔から多く、中国研究関連の古本も今でも沢山古本屋に置いてあります。

● 新刊の中国関連図書を扱う本屋として、現在、内山書店と東方書店の二軒があります。内山書店は、魯迅とも交遊のあった内山完造氏の親戚のかたが経営されています。私も今回、中国から輸入された本を何冊か買ってきました。

中国から日本を訪問される方には、時間を見つけて、是非神田神保町も訪問していただいたら興味深いと思います。百年前の中国人留学生達の足跡をたどることは意義深いと思います。中国語/中国関連の面白い古本も見つかるかもしれません。日本語ができる方や、アニメ・漫画その他の趣味をもつ人にとっては、とても面白いと思います。

逆に私も中国の古本屋を訪ねてみたいと思います。このブログの読者で良い古本屋をご存知の方がいらっしゃれば、ぜひ教えて下さい。

(井出敬二 前在中国日本大使館広報文化センター所長)

「チャイナネット」2009年1月14日

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