現代日本文学が中国語になるとき──大江健三郎・村上春樹・渡辺淳一のばあい

人民中国  |  2008-09-05

現代日本文学が中国語になるとき──大江健三郎・村上春樹・渡辺淳一のばあい。

タグ:現代 日本 文学 中国語

発信時間:2008-09-05 17:24:44 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

ノーベル賞受賞で始まった大江文学の翻訳

大江健三郎にノーベル文学賞授与のニュースが発表されたのは1994年10月13日のこと、その2日後に香港紙『文匯報』が「APストックホルム電」として「日本の小説家兼エッセイストの小江が木曜日ノーベル文学賞を受賞した」という記事を掲載した。英語のOeを中国語に翻字する際に大小を取り違えて「小江」と誤って記したのだろう。この一件からも、受賞以前の大江が中国ではさほど著名ではなかったことがうかがえよう。中国の現代日本文学研究の長老である李徳純(リー・トーチュン、りとくじゅん、1926~)教授もその年の12月17日の『朝日新聞』に寄稿した「大江文学 中国的視点から」というエッセーで、この点を率直に認めて、次のように書いている。

上海の日刊紙『文匯報』にいたっては、「(中国の)日本文学研究家と翻訳家はなぜ、ダージャン(大江)から目を背けていたのか」と、辛口の直言を載せたほどだった。確かに、大江文学の翻訳・研究は中国ではまだ十分とはいえない。『飼育』『人間の羊』『不意の唖』など初期の作品が、社会性をはらんだ小説として選ばれ、すでに翻訳されているが、それ以降の大江文学への関心は、数限られた日本文学専攻の者にとどまっていたのかと考えさせられる。

それでも受賞から7カ月後の95年5月には、堂々全5巻の『大江健三郎作品集』が翻訳・刊行された。その構成は「性的人間」と「我らが時代」で1巻、『万延元年のフットボール』で1巻、奥付の印刷部数によれば、両巻は初版50000部だ。短編集『死者の奢り』には「奇妙な仕事」「飼育」「聡明なレインツリー」が収録されて30000部。『個人的体験』の巻には表題作と「新しい人よ目覚めよ」が入って10000部。そして『ヒロシマ・ノート』が30000部である。各巻には共通してノーベル賞関係の一連の講演と清華大学準教授の王中忱による「訳者序・辺境意識と小説の方法」が付されている。

こうしてノーベル賞受賞をきっかけに本格化した大江文学の翻訳は、その後はますます盛んになり、現在では中国最高峰のアカデミーである中国社会科学院外国文学研究所の許金龍教授を中心に、全30巻の大江全集中国語版の刊行計画が進行中なのである。

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