東京外国為替市場は5日、日本円の対米ドルレートが1ドル=87円近くまで急速に上昇した。わずか数カ月の間に日本円は5%以上値上がりしたことになる。日本ではますます多くの輸出企業が、業績の回復に円上昇の影響が出ることを懸念し始めている。あるアナリストの分析によると、日本円が高水準で推移する、あるいは一層高い水準に発展すれば、多くの輸出企業が巨額の為替差損を被り、日本経済復興の重責を担う自動車産業や家電産業が真っ先にダメージを受けることになるという。国際在線が伝えた。
日本銀行(中央銀行)が1日に発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)の結果によると、各輸出企業が設定した2010財政年度の日本円の対米ドルレートの平均は1ドル=90.44円で、90円前後と見積もる企業が圧倒的に多い。現在、東京外国為替市場では1ドルは87.8円で、ほとんどの企業の予測を上回っている。日産自動車はレートを1ドル=90円と設定しており、円の対ドルレートが1円上がるごとに、日産の年間売上高は約150億円(約11億6千万元に相当)減少することになる。日産の責任者は「レートがあるべき水準で安定を保ってほしい」と心配顔だ。
日本のある経済学者が指摘したところによると、最近の貿易統計では、日本の対米輸出が停滞し、円上昇が一層進めば、輸出企業にとっては泣き面に蜂だ。現在、国際外為市場ではユーロの値下がりが著しく、ユーロ値下がりの恩恵を受けるドイツなどの国は日本と国際市場を争っており、円上昇は日本の輸出停滞の危機を増大させている。
輸出産業が危機に直面するのとは対照的に、日本の旅行産業は円上昇に喜びを隠せないでいる。大手旅行会社のJTBがこのほど発表した夏休みの旅行の動向調査によると、経済状況の好転と円上昇の恩恵を受けて、夏休みに海外旅行する日本人の数は前年比8.4%増加ののべ224万人に達し、2年連続で増加し、金融危機発生前の水準を回復することが期待されるという。
日本経済団体連合会がこのほど発表した大企業の夏のボーナスに関する統計結果によると、従業員への平均ボーナス支給額は約80万円(約6万1千元に相当)に上り、2年ぶりの増加となった。ある保険会社の調査によれば、ボーナスで旅行や豪華な食事などのぜいたくをしたいと考える世帯は、昨年の14.2%から今年は28.4%に増加しており、円上昇が日本の家庭に福音をもたらしていることは間違いない。
だが外国人観光客の多くが訪れるホテル、家電量販店、百貨店、観光地などにとっては、円の大幅上昇のニュースは歓迎すべからざるものだ。今月1日から日本政府が中国人観光客への査証(ビザ)発給要件を緩和したことを受けて、より大きな売上を期待していた百貨店や家電量販店の多くが、円上昇によるマイナス影響を懸念し始めている。ある百貨店の責任者は「中国人観光客が大幅に増加する見込みという好材料も、円上昇というマイナス材料でかなり帳消しになる」と密かに苦悩をもらす。
「人民網日本語版」2010年7月6日