上海万博日本国家館館長 江原規由
中国は古来より「龍」の棲む国とされてきました。龍は架空の動物ですが、中国の歴史、社会、そして人々の暮らしに彩りを添えてきました。また、絵画、文学など芸術分野でも周辺各国・地域で、龍は活躍の場を得ています。六月十二日のジャパンデーには、日本から来た巨大な緑色の龍が中国館に向け大行進し、沿道の人たちを大いに沸かせています。日本の龍が上海万博で中国に里帰りしたといってよいでしょう。
龍からパンダ
さて、上海万博会場にはどんな動物が棲んでいるのでしょうか。まず、中国館の周辺から見てみましょう。世博大道と世博軸と並行する上南路が交差する地点には、大きなパンダが数匹います。今の中国からどんな動物を連想するかといえば、やはりパンダという人が多いでしょう。ちょっと飛躍するかもしれませんが、動物からみた世界の対中認識は、得体のしれない龍から愛くるしいパンダへとシフトしたといってもよいのかも知れません。
上南路脇のマカオ館では、これまた大きなウサギ(玉兎宮灯)が屋根からそそり出て中国館を仰ぎ見ています。ウサギは古来より、賢く、身近なペットとして可愛がられてきています。日本ではウサギは月にも棲んでいます。その月に、中国は宇宙船を着陸させようとしています。その計画は「神舟計画」と「嫦娥計画」といわれますが、このうちの嫦娥とは月に棲む女性のことで、彼女のペットがウサギです。月に棲む日本のウサギは杵でもちをつきますが、中国のウサギも{きね}杵で薬草をついています(玉兎搗薬)。マカオ館の玉兎を見ていると、日本と中国のつながりをつくづく感じます。
動物発見 万博ならではの楽しみ
日本館から黄浦江を左に見てしばらく行くと、草木で造形された馬、羊、子犬などが今にも動き出すのではないかと思ってしまうほどのリアルさで佇んでいます。黄浦江を背にした動物の造形美を見ていると、万博会場内の喧噪を忘れる思いがします。
このほか、中国各省・直轄市・自治区の記念式典が行われる宝鋼大舞台の中には、ユニークな{えと}干支が参観者を待ち受けています。中国館では、秦の始皇帝時代の秦陵一号銅車馬が展示されています。二千年以上前に始皇帝が乗ったのと同じ車を{ひ}牽く馬の様相を見て当時を思い浮かべるのもよいでしょう。また、デンマーク館で海外初お目見えとなる国宝「人魚姫の像」や遼寧館で恐竜と鳥類の過渡期(一・四億年前と推定)に現れた始祖鳥~中華龍鳥などを見るのも万博会場ならではの楽しみとなるでしょう。
万博会場にはまだまだたくさんの動物が棲んでいます。長蛇の列に並ぶのは大変と思っている人には、万博会場で動物発見の旅をすることをお勧めします。
万博動物座つくり
さて、日本館は「かいこ島」(紫蚕島)と呼ばれています。外形が繭に似ていることに由来しています。アテンドさんの衣装は日中協力のシンボルである朱鷺(トキ)をイメージしており、今、百五十羽(人)以上が日本館に棲んでいます。
かつて、古人が夜空の星を見つつ動物を連想し星座をつくったように、万博会場を歩いて各パビリオンに動物の名前を付けて「万博会場動物座」をつくって楽しみたいと、筆者はいつも思っています。皆さんも参加しませんか。
中国館と玉兎宮灯
人民中国インターネット版 2010年7月20日